
インドネシアの治安は危険?そのイメージ、この記事で変わります。
「次の休みはバリ島でのんびりしたい」「ジャカルタの活気に触れてみたい」
インドネシアへの旅行を計画している時、美しい自然や文化への期待とともに、ふと頭をよぎるのが治安への不安ではないでしょうか。「スリやぼったくりは多いの?」「夜道は歩ける?」など、具体的な疑問が次々と湧いてくるかもしれません。
この記事では、漠然とした不安を解消し、あなたの旅を安全で最高なものにするための情報を詰め込みました。単に「危ない場所」をリストアップするだけでなく、なぜ犯罪が起きるのかという背景から、旅行者が本当に取るべき具体的な行動までを徹底的に解説します。インドネシアの治安に対する正しい知識は、あなたを守る最強の武器になるはずです。
●この記事を読んでほしい人
- 初めてインドネシア(バリ島やジャカルタ)へ旅行する人
- 漠然とした不安を、具体的な安全対策に変えたい人
- 「危ない場所」だけでなく「なぜ危ないのか」まで理解して行動したい人
●この記事を読むメリット
- ジャカルタとバリ島の本当に注意すべき危険エリアがわかる
- スリやひったくりなど、最も遭遇しやすい犯罪への具体的な対策が身につく
- 配車アプリの詐欺やテロなど、最新の脅威から身を守る方法が学べる
- 地震や食中毒など、犯罪以外のリスク管理まで網羅できる
- 不要な不安が消え、自信を持って旅行の準備を進められるようになる
安全な旅は、正しい情報から始まります。
この記事を読み終える頃には、あなたの不安は「自信」へと変わっているはずです。
インドネシアの治安は危険?【結論】正しく知れば怖くない

外務省の危険情報「レベル1」の真実
インドネシアでは、なぜ旅行者を狙ったスリやひったくりのような犯罪が後を絶たないのでしょうか。その答えは、この国の社会が抱える複雑な事情に隠されています。
美しい自然や文化の裏側にある社会背景を知ることは、より本質的な安全対策につながります。
急速な経済成長がもたらす光と影
インドネシアは目覚ましい経済成長を続けるアジアの経済大国です。首都ジャカルタを訪れれば、近代的な高層ビルが立ち並ぶ光景に誰もが驚くことでしょう。
しかし、華やかな発展の裏側で、深刻な所得格差や貧困問題が依然として存在します。すべての国民が経済成長の恩恵を受けているわけではなく、日々の生活に苦しむ人々も少なくありません。
こうした経済的な圧力が、残念ながら犯罪の温床となる一因になっています。
「持てる者」と見なされる外国人旅行者
経済的に厳しい状況にある人々にとって、外国人旅行者は「裕福な存在」として映りがちです。
旅行者が何気なく身に着けているブランドのバッグや高価な腕時計、最新のスマートフォンは、意図せずして犯罪者の注意を強く引きつけてしまうことがあります。
日本にいる時と同じ金銭感覚で行動していると、知らず知らずのうちに「自分は格好の標的です」というメッセージを発信してしまう危険があるのです。
インドネシアで発生する犯罪の多くは、個人の逸脱した行動というよりも、社会構造に根差した問題として理解する必要があります。この背景を心に留めておくだけでも、現地での振る舞い方は自然と慎重になり、多くのトラブルを未然に防ぐことができるはずです。
犯罪の背景にある経済格差と社会問題
インドネシアの治安について考えるとき、ただ「危ない場所」を覚えるだけでは十分な対策はできません。なぜ旅行者を狙った犯罪が起こるのか、その背景にある社会事情を少しだけ知っておくと、あなたの安全意識は格段に高まります。
急速な経済成長がもたらす光と影
インドネシアは、ASEANを牽引するほどの目覚ましい経済成長を遂げている国です。首都ジャカルタを訪れれば、天を突くような近代的な高層ビル群に、国の勢いを感じることでしょう。
しかし、その一方で、すべての国民が経済成長の恩恵を等しく受けているわけではありません。いまだに深刻な所得格差や貧困の問題が社会に横たわっています。日々の暮らしに困窮する人々がいることも、インドネシアのもう一つの現実なのです。こうした厳しい経済状況が、残念ながら犯罪が生まれる土壌の一つになっています。
「持てる者」と見なされる外国人旅行者
経済的な格差がある社会では、外国人旅行者はどうしても「裕福な人々」として見られがちです。
旅行者が日本にいるときと同じ感覚で身につけているブランド品や高価な宝飾品、最新のスマートフォンは、現地の人々の目には非常に価値のあるものとして映ります。本人はまったく意識していなくても、その服装や持ち物が「自分は格好のターゲットです」というサインになってしまう危険性があるのです。
インドネシアで起きる犯罪は、単に個人の問題として片付けられるものではありません。社会が抱える構造的な問題が、犯罪という形で現れていると理解することが大切です。この視点を持つことで、現地でどのような振る舞いをすべきか、自ずと見えてくるはずです。
首都ジャカルタの危険エリアと注意点
東南アジア最大級の巨大都市ジャカルタは、近代的なビジネス街と混沌とした下町が混在する、二つの顔を持つ街です。
立派なオフィスビルが並ぶエリアは一見安全そうに見えます。しかし、一歩足を踏み出すと、旅行者が注意すべき危険なエリアや場所が存在します。ここでは、ジャカルタを訪れる際に特に警戒すべきエリアと、具体的な注意点を解説します。
夜間は特に危険な旧市街「コタ地区」
オランダ統治時代の面影が残るコタ地区は、歴史博物館などの観光スポットが集まる人気のエリアです。昼間は多くの観光客で賑わいを見せます。
しかし、夜になるとその表情は一変します。周辺にはナイトクラブや歓楽街が点在し、スラム街も隣接しているため、雰囲気が大きく変わります。麻薬の売買などが行われることもある危険な側面を持つため、特に夜間に一人で訪れることは絶対に避けるべきです。
デモや集会に注意「モナス独立記念塔」周辺
ジャカルタの中心にそびえるモナス独立記念塔は、市民の憩いの場であり、街の象徴的な場所です。
しかし、ここは政治、宗教、労働問題に関するデモや集会が頻繁に開催される場所でもあります。平穏な集会が、何かのきっかけで突然暴徒化する可能性もゼロではありません。訪問前には、必ず在インドネシア日本国大使館のウェブサイトなどでデモ情報を確認してください。もしデモに遭遇した場合は、興味本位で近づくことなく、速やかにその場を離れることが賢明です。
日本人街と歓楽街の顔を持つ「ブロックM」
ブロックMは、多くの日本食レストランやカラオケが集まるエリアで、駐在員や日本人旅行者にとっては馴染み深い場所かもしれません。
しかし、ここは同時に歓楽街でもあります。リラックスした気持ちで訪れる旅行者を狙った、スリや悪質なぼったくりが横行しているのが実情です。特に夜間に訪れる際は、貴重品の管理を徹底し、知らない人からの甘い誘いには乗らないようにしましょう。
ジャカルタ特有の危険なスポット
特定のエリアだけでなく、ジャカルタ市内には注意すべき場所がいくつかあります。
歩道橋
人通りが少ない歩道橋は、強盗犯が待ち伏せするのに都合が良く、旅行者が被害に遭う事件が報告されています。現地企業が駐在員に利用を禁じるほど、危険視されている場所です。遠回りになったとしても、横断歩道を利用しましょう。
公共交通機関
トランスジャカルタのような混雑したバスの車内は、スリが多発する場所です。リュックサックは前に抱えるなど、常に荷物から意識を離さない工夫が必要です。
楽園バリ島に潜む観光客狙いの犯罪
世界中から多くの旅行者が集まるバリ島は、温厚で親切な人々が多く、比較的安全なリゾート地として知られています。美しいビーチや緑豊かな自然に囲まれ、心が解放的になる素晴らしい場所です。
しかし、そのリラックスした雰囲気が、旅行者の警戒心を解いてしまうことがあります。楽園での油断こそが、観光客を狙った犯罪の格好の標的になるという危険性を生み出します。バリ島を心から楽しむために、潜んでいるリスクについて知っておきましょう。
最も警戒すべき繁華街「クタ・レギャン地区」
バリ島で最も賑やかな繁華街であるクタ地区やレギャン地区は、残念ながら観光客を狙った犯罪の発生件数が最も多いエリアです。
ビーチや路上でのしつこい物売り、巧妙な手口で金額をごまかす両替所詐欺、そしてバイクを使ったスマートフォンやバッグのひったくりなど、あらゆる軽犯罪がこのエリアに集中しています。特に多くのバーやクラブが営業する夜間は、お酒も手伝ってトラブルに巻き込まれやすくなるため、最大限の警戒が必要です。
おしゃれエリア「スミニャック・チャングー」の注意点
クタ地区の北に位置するスミニャック地区やチャングー地区は、おしゃれなカフェやブティックが立ち並ぶ人気のエリアです。クタ地区に比べると落ち着いた雰囲気があります。
しかし、このエリアも多くの観光客が訪れるため、スリや置き引きのリスクは常に存在します。レストランのテーブルにスマートフォンを置いたままにしたり、荷物から目を離したりしないようにしましょう。夜間のクラブ周辺では、貴重品の管理に一層の注意が求められます。
油断は禁物!比較的安全とされるエリア
厳重なセキュリティゲートが設けられた高級リゾートエリアのヌサドゥア地区や、文化と芸術の中心地であるウブド地区は、他のエリアに比べて比較的安全とされています。
しかし、この「安全」という言葉に油断してはいけません。ヌサドゥア地区でも、一歩ゲートの外に出れば他の地域と同様の注意が必要です。また、ウブド地区でも観光客を狙ったタクシーのぼったくりは発生します。田園地帯に点在する隠れ家的なヴィラは、セキュリティが手薄な場合もあるため、戸締りなどをしっかり確認することが大切です。どのエリアに滞在するとしても、「自分の身は自分で守る」という意識を忘れないでください。
渡航中止勧告も。パプア州の危険な現状
これまで解説してきたジャカルタやバリ島の治安リスクとは、危険性の種類とレベルが根本的に異なる地域がインドネシアには存在します。外務省が「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」や、さらに厳しい「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を発出しているパプア州の特定地域が、まさにその場所にあたります。
旅行者がこの地域について知っておくべきは、個人の注意で回避できるレベルのリスクではないという厳然たる事実です。
脅威は「犯罪」ではなく「紛争」
パプア州の特定地域における危険の中心は、スリや強盗といった金品目当ての一般犯罪ではありません。脅威の正体は、インドネシアからの分離独立を求める武装勢力と、インドネシアの国軍・警察との間で続く、長年の政治的な「紛争」です。
武装勢力による襲撃事件が散発しており、地域の治安は極めて不安定な状況にあります。旅行者が遭遇する可能性のある危険は、街角の犯罪とは全く次元が異なります。
外国人も標的になる暴力行為
武装勢力による攻撃は、治安当局の施設や隊員だけを狙うとは限りません。活動資金を得るための身代金目的で、外国人を誘拐する可能性も指摘されています。
過去には、実際に外国人が標的となり、命を落とす悲劇も発生しました。一般市民が戦闘に巻き込まれるケースも後を絶ちません。こうした状況下では、旅行者が自らの注意だけで安全を確保することは不可能です。
観光目的での渡航は絶対に避けるべき
結論として、外務省が「不要不急の渡航は止めてください」以上の危険情報を発出しているパプア州の地域へは、どのような理由であれ、観光客が足を踏み入れるべきではありません。
あなたのインドネシア旅行が安全で楽しいものになるよう、これらの地域には絶対に近づかないという判断が不可欠です。
インドネシアの治安:旅行者が知るべき脅威と究極の対策

ひったくり・スリから身を守る3つの鉄則
インドネシアの街中で旅行者が最も遭遇しやすい犯罪は、残念ながら「ひったくり」と「スリ」です。
しかし、これから紹介するいくつかの基本的な鉄則を意識するだけで、被害に遭うリスクを劇的に減らすことができます。自分の身を守るために、ぜひ実践してください。
鉄則1:歩きスマホは絶対にしない
スマートフォンを見ながら歩く行為は、犯罪者にとって「格好のターゲットです」と知らせているようなものです。
歩きながら地図アプリを確認したり、メッセージを送ったりしていると、周囲への注意が完全に散漫になります。犯人はその一瞬の隙を見逃しません。背後から近づくバイクや人物に気づくことができず、スマートフォン自体やバッグを奪われる原因になります。
道を確認したい時や連絡を取りたい時は、一度立ち止まり、カフェや店舗の壁際など、背後を気にしなくてよい安全な場所で行うようにしましょう。
鉄則2:バッグは「抱える」ように持つ
バッグの持ち方一つで、ひったくりやスリの被害を防ぐ確率は大きく変わります。
まず、バイクによるひったくり対策として、バッグは必ず車道と反対側の腕で持つか、体の前でしっかりと抱えるようにしてください。ショルダーバッグは、たすき掛けにするとより安全です。
また、市場や混雑したバスの中など、人が密集する場所ではスリに注意が必要です。リュックサックは前に抱え、ショルダーバッグやハンドバッグは体の正面で、常に自分の手が触れていられる位置で持ちましょう。
鉄則3:高価なものを「見せびらかさない」
犯罪のターゲットにならないための最も基本的な原則は、裕福に見られないようにすることです。
高価な腕時計や派手な宝飾品、一目でブランド品とわかるバッグなどを身に着けて街を歩くのは、危険を引き寄せる行為だと認識してください。服装はなるべくシンプルで、現地に溶け込むようなものを選ぶのが賢明です。
また、人前で多額の現金が入った財布を見せることも避けましょう。支払い時は必要最低限のお金だけを出すように心がけることも、大切な自己防衛術の一つです。
最新手口!配車アプリを使った巧妙な詐欺
インドネシア旅行の心強い味方である、GrabやGojekといった配車アプリ。料金交渉の必要がなく、目的地まで安心して移動できるため、多くの旅行者が利用しています。
しかし、この便利なシステムを逆手に取った、非常に巧妙な詐欺が報告されるようになりました。手口を知らないと、誰でも被害に遭う可能性があります。ここでは、あなたの楽しい旅行を守るために、最新の詐欺手口とその絶対的な対策を解説します。
詐欺の巧妙なシナリオ
詐欺は、あなたが配車アプリで車を予約した直後から始まります。
まず、ドライバーとは別の人物から、あなたの携帯電話に直接連絡が入ります。相手は流暢な英語で「Grab(またはGojek)のオフィスです」と名乗り、「キャンペーンに当選しました」「ボーナスポイントを差し上げます」といった、魅力的な話を持ちかけてきます。
そして、「賞金を受け取るために、あなたの携帯電話に今送った認証コード(OTP)を教えてください」と要求してきます。突然の幸運に舞い上がり、言われるがままに画面に表示された数字を伝えてしまうと、詐欺は成功してしまいます。
認証コードを教えることの本当の危険性
犯人が要求してくる認証コード(OTP:ワンタイムパスワード)は、単なる手続きのための番号ではありません。それは、あなたのアカウント自体にアクセスするための「たった一度だけ使える鍵」です。
この鍵を犯人に渡してしまうと、犯人はあなたのアカウントに不正にログインし、登録されたクレジットカードで高額なサービスを決済したり、アプリ内の電子マネー(GoPayやOVOなど)を根こそぎ自分の口座へ送金したりします。気づいた時には、すべてが終わっているのです。
被害を防ぐための絶対的なルール
この巧妙な詐欺から身を守る方法は、実は非常にシンプルです。たった一つのルールを守るだけで、被害を100%防ぐことができます。
そのルールとは、「いかなる理由があっても、他人には絶対に認証コードを教えない」ことです。
配車アプリの会社やドライバーが、電話やメッセージであなたに認証コードを尋ねることは絶対にありません。「当選した」などの甘い言葉は、すべて詐欺です。万が一そのような連絡があった場合は、何も答えずにすぐに電話を切り、アプリを通じて運営会社へ報告しましょう。
テロから命を守るための自己防衛マニュアル
「テロ」という言葉を聞くと、自分には関係のない遠い国の出来事のように感じるかもしれません。しかし、残念ながらインドネシアでは依然としてテロの脅威が存在します。
旅行者がテロ事件に巻き込まれる可能性は決して高くはありません。しかし、万が一の事態から命を守るためには、リスクを正しく理解し、基本的な自己防衛策を知っておくことが不可欠です。
テロリストに狙われやすい場所
テロリストは、自分たちの主張を世界に発信するため、より多くの注目を集める場所を標的にする傾向があります。インドネシアにおいては、特に欧米系の外国人や旅行者が集まる場所が狙われやすいと考えられています。
具体的には、以下のような場所が挙げられます。
- 外資系の高級ホテル
- 欧米の有名ブランドが入った大規模ショッピングモール
- 外国人が多く利用するレストランやバー
- 教会などの宗教関連施設
- 各国の政府関連施設
これらの場所を訪れる際は、不必要に長居することは避け、常に周囲の状況に注意を払うようにしてください。
特に警戒が必要な時期
テロはいつどこで起こるか予測が困難です。しかし、過去の事件を見ると、特定の時期にリスクが高まる傾向があります。
クリスマスや年末年始、イースター(復活祭)、またイスラム教の断食月(ラマダン)明けの大型連休などは、特に警戒が必要です。また、インドネシアの独立記念日(8月17日)や大統領選挙といった、国全体が注目する政治的なイベントの時期も、治安当局の警戒が強化されます。旅行の計画を立てる際は、滞在期間がこうした時期と重なっていないか確認することも大切です。
リスクを減らすための3つの行動
テロを完全に防ぐことはできなくても、リスクを減らすために旅行者ができる行動があります。
- 周囲への注意を怠らないレストランやモールにいる時も、時々周りを見渡す癖をつけましょう。不審な人物や、持ち主のわからない不審な荷物がないかを確認し、避難経路(非常口)がどこにあるかを意識しておくだけでも、いざという時の行動が変わります。
- 異変を察知したらすぐに離れるもし近くで大きな爆発音や人々の悲鳴が聞こえたら、ためらわずにその場から全速力で離れてください。状況を確認しようとしたり、スマートフォンで撮影しようとしたりする行為は、二次的な爆発に巻き込まれる可能性があり非常に危険です。
- 野次馬にならない事件現場には絶対に近づかないでください。好奇心から現場に近づく行為は、自分自身を危険に晒すだけでなく、救助活動の妨げにもなります。安全な場所に避難し、警察や救急隊の指示に従うことが最も重要です。
地震・火山!災害大国での情報収集と備え
インドネシアの安全を考える上で、犯罪と同じくらい、あるいはそれ以上に注意しなければならないのが自然災害です。
日本と同じく「環太平洋火山帯(リング・オブ・ファイア)」に位置するインドネシアは、世界有数の地震・火山大国です。旅行者は、災害がいつでも起こりうるという前提で、正しい情報を入手する方法と、基本的な備えを身につけておく必要があります。
命を守るための「情報源」を確保する
災害発生時に最も重要なことは、信頼できる情報にアクセスすることです。インドネシア旅行の際は、以下の情報源を必ず確保しておきましょう。
BMKGの公式アプリ
BMKG(インドネシア気象気候地球物理庁)は、インドネシア政府の公式機関で、地震、津波、気象に関する全ての警報を発表します。専用のスマートフォンアプリを事前にダウンロードしておけば、警報をリアルタイムで受け取ることができます。
外務省海外旅行登録「たびレジ」
「たびレジ」に登録しておくと、渡航先の日本国大使館や総領事館から、大規模な災害発生時の緊急情報や注意喚起が日本語で届きます。また、万が一災害に巻き込まれた際の安否確認も、この登録情報をもとに行われます。登録は任意ですが、安全のためには必須と考えるべきです。
噴火が旅行者に与える直接的な影響
インドネシアには多数の活火山が存在し、いつ噴火してもおかしくありません。
火山の危険性は、火口から噴出する溶岩や火山弾だけではありません。旅行者にとって最も現実的な影響は、火山灰による「空港の閉鎖」と「フライトの欠航」です。噴火した火山から遠く離れた地域の空港でも、風向きによっては火山灰の影響で数日間にわたり閉鎖されることがあります。
また、当局が設定する「立入禁止区域」は、命を守るための絶対的なルールです。危険レベルは予告なく変更されるため、登山などを計画している場合は、必ず最新の公式情報を確認してください。
滞在中に取るべき基本的な備え
災害は予測できません。だからこそ、日頃からの小さな備えが重要になります。
ホテルに到着したら、まず非常口の場所や避難経路を確認する習慣をつけましょう。海沿いのエリアに滞在する場合は、津波の際の避難場所や避難経路も合わせて確認しておくと、より安心です。
旅行の計画には、予期せぬ事態に備えて日程や予算に少し余裕を持たせておくと、万が一フライトの遅延や欠航が発生した際も、落ち着いて対応することができます。
「バリ腹」は卒業!食中毒・感染症対策
インドネシア旅行で多くの人が経験する体調不良が、腹痛や下痢、通称「バリ腹」です。せっかくの旅行が台無しにならないよう、日本とは異なる衛生環境に適応するための知識を身につけましょう。
いくつかの簡単なルールを守るだけで、食中毒や感染症のリスクは大幅に減らすことができます。
水と氷は「ペットボトル」が絶対のルール
インドネシアでは、いかなる地域の水道水もそのまま飲むことはできません。飲用には、必ず未開封のペットボトル入りミネラルウォーターを利用してください。
このルールは、歯磨きやうがいの水にも適用されます。口をゆすぐだけの水でも、お腹を壊す原因になり得ます。
また、屋台やローカルな食堂で提供される氷は、水道水から作られている可能性が高く、腹痛の最大の原因の一つです。ジュースや水などを注文する際は、「氷なし」を意味する「タンパ・エス(Tanpa es)」と伝えるのが最も安全な対策です。
屋台も楽しめる!「火が通ったもの」を選ぶ
旅行の醍醐味である屋台(ワルン)での食事も、選び方さえ間違えなければ安全に楽しむことができます。
原則は、「十分に火が通った、出来立てのもの」を食べることです。注文を受けてから目の前で調理してくれるような、衛生的で繁盛しているお店を選びましょう。
一方で、生の野菜が使われたサラダや、作り置きされて時間が経っていそうな料理は避けるのが賢明です。皮をむいていないカットフルーツも注意が必要です。
蚊は最大の敵!デング熱から身を守る
インドネシアで最も注意すべき感染症の一つが、蚊が媒介するデング熱です。デング熱はインドネシア全土で一年を通じて発生しています。
デング熱から身を守る基本は、とにかく蚊に刺されないことです。
- 外出時は、なるべく長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を少なくする。
- 虫除けスプレーをこまめに使用する。
特に、蚊が活発に活動する朝方や夕方は、重点的な対策を心がけてください。
見落としがちなその他の健康リスク
蚊以外にも、注意すべき健康リスクがあります。
バリ島などでは、狂犬病のリスクも報告されています。野良犬や猿は見た目が可愛らしくても、むやみに近づいたり触ったりしないようにしましょう。
また、アラックと呼ばれる自家製の蒸留酒など、安価なアルコール飲料には有毒なメタノールが含まれている危険性があります。失明や死に至るケースもあるため、アルコールは必ず営業許可を持つ信頼できる店舗で購入してください。
まとめ:インドネシアの治安を理解し、安全な旅の準備を

記事のポイント
- 経済格差が、外国人旅行者を狙った犯罪の背景にある
- ジャカルタなどの大都市には、夜間の旧市街や歓楽街といった危険エリアが存在する
- バリ島のリゾート地も例外ではなく、クタ地区を中心にスリやひったくりが多発する
- 紛争が続くパプア州など、観光客が決코立ち入るべきではない地域がある
- 歩きスマホは厳禁、バッグは車道と反対側で体の前に抱えるのが防犯の基本である
- 配車アプリで運転手以外から連絡があり、認証コードを聞き出す詐欺に注意が必要だ
- テロの標的になりやすい外資系ホテルや大規模モールでの長居は避けるべきである
- 地震や火山噴火に備え、災害情報を入手できる公式アプリや「たびレジ」は必須だ
- 食中毒対策として、飲用は未開封のペットボトルの水に限り、氷も避けるのが賢明だ
- 蚊が媒介するデング熱は一年中流行しており、虫除け対策を怠ってはならない
総括
インドネシアの治安について、スリやひったくりといった犯罪から、自然災害、衛生問題まで様々なリスクをご紹介しました。多くの注意点に、かえって不安を感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この記事でお伝えしたかった最も大切なことは、「リスクを正しく知り、事前に対策をすれば、安全はご自身で作り出せる」ということです。高価なものを身に着けず、持ち物に常に気を配り、口にするものを選ぶ。一つひとつは決して難しいことではありません。こうした基本的な対策こそが、インドネシアの治安と向き合う上で、何より効果的なお守りとなります。
過度に怖がる必要はありません。準備を万全に整えることで、心に余裕が生まれ、インドネシアが持つ本来の魅力——雄大な自然や奥深い文化、そして人々の温かさに、存分に触れることができるはずです。この記事で得た知識を武器に、あなたのインドネシア旅行が安全で素晴らしい体験となることを、心から願っています。