
ベトナムの地震、その”本当の”リスクを知っていますか?
ベトナムへの旅行や移住を計画する中で、「地震は大丈夫かな?」と、ふと気になったことはありませんか?多くの方が「ベトナムは地震がない安全な国」というイメージをお持ちかもしれません。
しかし、そのイメージは本当に正しいのでしょうか?実は、ベトナムの地震に関するリスクは、「ない」のではなく「低い」というのが正確な答えです。
この記事では、過度に不安を煽るのではなく、科学的なデータと専門家の見解に基づき、ベトナムで地震が起きる本当の理由から、万が一の際の具体的な対策までを分かりやすく解説します。
●この記事を読んでほしい人
- ベトナムへの旅行や出張を控えている人
- ベトナムへの移住や長期滞在を検討している人
- ベトナムの自然災害リスクについて正確な情報が知りたい人
●この記事を読むメリット
- ベトナムで地震が少ない本当の理由がわかる
- 過去に起きた地震の規模や頻度がわかる
- ハノイとホーチミンの都市ごとのリスクの違いがわかる
- 旅行・滞在中に取るべき安全行動が具体的にわかる
- 漠然とした不安が解消され、安心して滞在できる
漠然とした不安を確かな知識に変える旅へ、ここから始めましょう。
ベトナムの地震、本当のリスクは?

地震は少ないがゼロではない
ベトナム旅行や移住を考えるとき、「地震は大丈夫なのかな?」と気になるかもしれませんね。多くの方が、ベトナムに対して地震とは無縁の安全な国というイメージを持っているのではないでしょうか。
最初に結論からお伝えします。そのイメージは半分正しく、半分は少しだけ修正が必要です。ベトナムで地震が発生する頻度は日本に比べて圧倒的に少なく、巨大地震のリスクも極めて低いです。しかし、地震活動が全くのゼロというわけではありません。
「地震がない国」ではないという事実
多くの人が持つ「ベトナムは地震がない国」というイメージに反して、実はベトナム国内では体に感じないほどの小さな地震がほぼ毎日観測されています。
もちろん、日本のように頻繁に大きな揺れに見舞われることはありません。しかし、過去には被害を伴う中規模の地震も記録されており、「地震が全く起きない国」ではないという事実を知っておくことが大切です。
リスクを正しく理解するためのポイント
ベトナムの地震リスクを正しく理解するため、この記事では以下の3つのポイントに焦点を当てて解説していきます。
- 巨大地震の可能性は極めて低い
- しかし、中規模の地震は過去に発生している
- 地震のリスクは地域によって大きく異なる
過度に心配する必要はありませんが、正しい知識を持つことで、より安心してベトナムでの滞在を楽しむことができます。この記事を通して、ベトナムの地震に対する漠然とした不安を、具体的な知識へと変えていきましょう。
地震が少ないのはプレート境界から遠いから
「ベトナムの地震は少ない」と聞いても、「日本の隣の地域なのに、なぜ?」と不思議に思いますよね。その最大の答えは、地球規模で見たベトナムの地理的な位置に隠されています。
地震のほとんどは「プレート境界」で発生
まず、地震が起きる基本的な仕組みについて、簡単に触れておきましょう。地球の表面は、パズルのピースのように組み合わさった十数枚の巨大な岩盤「プレート」で覆われています。
地震の大部分は、このプレート同士がぶつかったり、すれ違ったり、沈み込んだりする「境界」で発生します。プレートの境界では常に巨大な力がかかっているため、エネルギーが解放されやすく、それが地震という形で現れるのです。
環太平洋火山帯の外側という幸運な立地
日本は、まさに複数のプレートがひしめき合う境界の上に位置しており、世界で最も地震活動が活発な「環太平洋火山帯(リング・オブ・ファイヤー)」の一部です。
しかし、ベトナムはこれらの主要なプレート境界から遠く離れ、「ユーラシアプレート」という一つの巨大なプレートの内部、比較的安定した場所に位置しています。プレートの境界という地震の最前線から距離があるため、日本のような巨大地震を引き起こすエネルギーが蓄積されにくいのです。
国ごとの位置関係を比べてみましょう
プレートの位置と地震リスクの関係を、他の国と表で比べてみると、その違いがよりはっきりと分かります。
国 | プレートの位置 | 地震リスク |
日本 | プレート境界の上 | 高い |
インドネシア | プレート境界の上 | 高い |
ベトナム | プレートの内部 | 低い |
このように、ベトナムが享受している地震の少なさは、まさに地理的な幸運の賜物と言えるでしょう。この安定した地盤こそが、ベトナムで大規模な地震が起こりにくい根本的な理由となっています。
でも国内に活断層あり!リスクの火種
プレート境界から遠く、比較的安全な地盤の上にあるベトナム。しかし、地震のリスクが全くのゼロではないのは、国内に複数の「活断層」が存在するためです。活断層は、いわば大地に刻まれた古傷のようなもので、普段は静かですが、時に地震を引き起こす「火種」となります。
プレート内部で発生する地震
プレートの境界で起きる地震とは別に、プレートの内部で発生する「プレート内地震」というものがあります。ベトナムで起こる地震は、主にこのタイプです。
巨大なプレート全体が動く中で、内部の弱い部分に応力が集中し、そこがズレ動くことで地震が発生します。ベトナム国内には、この応力の受け皿となる大規模な活断層が、特に北部に集中して存在しているのです。
ベトナムの主要な活断層
ベトナムの地震リスクを語る上で、知っておきたい主要な活断層がいくつかあります。
活断層の名前 | 位置 | 特徴 |
ソンホン(紅河)断層帯 | ベトナム北部を縦断 | 首都ハノイの近くを通り、過去に強い地震を引き起こした可能性が指摘される。 |
ディエンビエン・ライチャウ断層帯 | 北西部 | ベトナムで最も地震活動が活発な地域を形成。過去に記録された最大級の地震の多くがこの断層帯に関連している。 |
ソンマー(馬河)断層帯 | 北部 | 北部の高い地震活動に影響を与えている主要な断層の一つ。 |
これらの活断層が動くことで、過去にはマグニチュード6.0から7.0クラスの、大きな被害をもたらしうる規模の地震が発生したと考えられています。
リスクは低い、しかし油断は禁物
これらの活断層の活動は、日本の活断層に比べるとそれほど活発ではありません。そのため、大きな地震が頻繁に起こるわけではないのです。
しかし、静穏に見える活断層も、数十年から数百年の周期で活動する可能性があります。この「忘れた頃にやってくる」リスクの存在が、ベトナムの地震対策を考える上で重要なポイントになります。
過去にはM6級の地震も!歴史が示す事実
理論上のリスクだけでなく、ベトナムでは過去に実際に大きな地震が発生した記録が残っています。これらの歴史的な事実は、ベトナムの地震ポテンシャルを具体的に示してくれる重要なものです。
観測史上、最大級の地震
ベトナムの近代的な地震観測の歴史の中で、特に大きな地震として記録されているのが、北西部で発生した2つの地震です。
発生年 | 震源地 | マグニチュード(M) |
1935年 | ディエンビエン盆地 | 6.8 |
1983年 | ディエンビエン省トゥアンザオ | 6.7 |
マグニチュード6.7や6.8という規模は、日本の基準で言えば震度6強から7に相当する揺れを引き起こすこともある、非常に強い地震です。もし人口が密集する都市の近くで発生すれば、建物に深刻な被害をもたらす可能性があります。
近年でも被害を伴う地震が発生
21世紀に入ってからも、ベトナムでは建物の損壊などを伴う中規模の地震が報告されています。
近年の主な被害地震
- 2001年 ディエンビエンフー市(M5.3)
- 約12億円相当の経済的被害が発生したと報告されています。
- 2019年 カオバン省チュンカイン(M5.4)
- 多くの家屋に大きな被害が出ました。
- 2020年 ソンラ省モックチャウ(M5.3)
- 多くの建物が損壊する被害がありました。
これらの地震は、マグニチュードの数字だけを見るとそれほど大きく感じないかもしれません。しかし、震源が浅い場合や、耐震性の低い建物が多い地域で発生した場合、M5クラスでも十分に大きな被害につながることを示しています。
歴史から学ぶべきこと
ベトナムの地震の歴史を振り返ると、数十年に一度の頻度で、マグニチュード6を超えるような強い地震が発生していることが分かります。
当時と現在では、都市の発展度合いや人口密度が大きく異なります。過去の地震が、もし現代のハノイや他の都市の近くで発生した場合、その被害は比較にならないほど大きくなる可能性があります。歴史は、私たちが未来に備えるための大切な教訓を与えてくれているのです。
地震の頻度は?年に数回の小規模な揺れ
過去に大きな地震があったと聞くと、「では、どのくらいの頻度で揺れを感じるのだろう?」と心配になるかもしれません。しかし、ベ-トナムで体に感じる揺れが起きる頻度は、日本での経験とは全く異なります。
日常生活で揺れを感じることは稀
ベトナムに住んでいても、日常生活の中で地震の揺れを感じることはほとんどありません。多くの在住者が「ベトナムに来てから一度も地震を経験したことがない」と話すほど、その頻度は低いのです。
気象庁が発表する日本の震度階級で言えば、多くの人が揺れに気づく震度2や震度3といった規模の地震が、ベトナム全土で年に数回ある程度です。
日本との頻度の違い
地震が日常的な日本では、体に感じる地震が年間で2,000回近く観測されています。この数字と比べると、ベトナムがいかに地震の少ない国であるかがよく分かります。
国 | 体に感じる地震の年間回数(目安) |
日本 | 約2,000回 |
ベトナム | 年に数回程度 |
この圧倒的な頻度の差が、「ベトナムでは地震は起きない」というイメージにつながっているのかもしれません。
小さな地震は観測されている
しかし、体に感じないだけで、人間の感覚では捉えられないごく微弱な「無感地震」は、ベトナム国内でもほぼ毎日観測されています。
これは、ベトナムの地下にある活断層が、常にわずかながら活動を続けている証拠です。頻繁に揺れを感じることはないものの、地震を引き起こすエネルギーが少しずつ蓄積されている可能性は、決して忘れてはいけません。
ベトナムで地震に遭遇!その時のための実践知識

ハノイvsホーチミン 都市別のリスク解説
ベトナムの地震リスクは、国全体で一様ではありません。特に、多くの日本人が滞在する二大都市、北部の首都ハノイと南部の経済都市ホーチミンでは、リスクの種類と度合いが大きく異なります。ご自身の滞在先に合わせて、具体的な注意点を理解しておきましょう。
首都ハノイのリスク:直下の活断層
ベトナム国内では、ハノイの地震リスクは比較的高いと評価されています。その最大の理由は、市のすぐ近くを巨大な「ソンホン(紅河)断断層帯」が通っているためです。
もしこの断層が活動した場合、震源が非常に近いため、都市は強い揺れに直接見舞われる可能性があります。過去の記録やシミュレーションでは、ハノイは最大で震度8(MSK震度階級)の揺れに見舞われる可能性がある区域に含まれています。これは、建物に深刻な被害をもたらしうるレベルの揺れです。
2024年3月には、ハノイ市内のミードゥック郡でマグニチュード4.0の地震が発生し、多くの高層ビルで揺れが感じられました。この出来事は、首都のすぐ足元に地震のリスクが実在することを再認識させるものとなりました。
経済都市ホーチミンのリスク:高層ビルの揺れ
一方、ホーチミン市の地震リスクはハノイよりも低いとされています。近くに大規模な活断層が存在しないため、ハノイのような直下型地震の危険性は低いと考えられています。
しかし、ホーチミンには特有の「現代的なリスク」が存在します。それは、遠くで発生した大きな地震による「長周期地震動」です。
地震動の種類 | 特徴 | 影響を受けやすい建物 |
短周期地震動 | 小刻みで速い揺れ | 低層の建物 |
長周期地震動 | ゆっくりとした大きな揺れ | 高層ビル |
ホーチミンでは近年、高層ビルやタワーマンションの建設が急増しました。これらの背の高い建物は、周期の長い、ゆっくりとした揺れと共振しやすく、地上ではほとんど感じない揺れでも、上層階では船に乗っているように大きく長く揺れることがあります。
実際に過去、ミャンマーで発生した地震の際には、数百キロ離れたホーチミン市内のオフィスビルが揺れ、住民が避難する出来事もありました。
都市別リスクのまとめ
二つの都市のリスクをまとめると、以下のようになります。
都市 | 主なリスク | 特徴 |
ハノイ | 直下型地震 | 首都の近くに活断層があり、強い揺れに見舞われる可能性がある。 |
ホーチミン | 長周期地震動 | 遠地地震で高層ビルの上層階が大きく長く揺れる可能性がある。 |
このように、滞在する都市によって注意すべき地震のリスクが異なります。特に高層階に滞在する予定がある場合は、この違いを理解しておくことが大切です。
揺れたら実践!旅行・滞在中の安全行動
ベトナムで地震に遭遇する可能性は低いですが、万が一揺れを感じた時にどう行動するかを知っておくことは、ご自身の安全を守る上で非常に重要です。パニックにならず、落ち着いて行動できるよう、基本的な安全行動を覚えておきましょう。
基本原則「まず低く、頭を守り、動かない」
強い揺れを感じたら、場所を問わず世界共通の安全行動「ドロップ、カバー、ホールドオン」を実践してください。
- まず低く(DROP):その場で姿勢を低くします。
- 頭を守り(COVER):机やテーブルの下など、頑丈なものの下に隠れ、頭や首を落下物から守ります。隠れる場所がない場合は、腕やカバンで頭を守りましょう。
- 動かない(HOLD ON):揺れが収まるまで、じっと動かずに待ちます。テーブルの脚などにしっかりとつかまると、より安全です。
慌てて屋外に飛び出すのは、かえって危険な場合があります。まずはその場で身の安全を確保することを最優先してください。
場所別の具体的な行動
滞在している場所によって、取るべき行動は少しずつ異なります。落ち着いて周囲の状況を判断しましょう。
滞在場所 | 安全な行動 | 危険な行動 |
ホテル・建物の中 | 机やベッドの下に隠れる。落下物が少ない壁際に移動する。 | 慌てて外に飛び出す。エレベーターを使う。 |
屋外 | 建物や電線、看板から離れた開けた場所に移動する。頭上からの落下物に注意する。 | 建物のそばに駆け寄る。狭い路地に逃げ込む。 |
車の中 | ゆっくりと速度を落とし、道路の脇に停車する。車内で揺れが収まるのを待つ。 | 急ブレーキをかける。橋の上やトンネル内で停車する。 |
揺れが収まった後の行動
最初の大きな揺れが収まっても、油断は禁物です。落ち着いて次の行動に移りましょう。
- 自身の安全を確認する:まず、ご自身や周りの人にケガがないか確認します。
- 火の元を確認する:もし火を使っていた場合は、すぐに消してください。
- 避難経路を確保する:ドアや窓を開けて、いつでも避難できる出口を確保します。建物が歪むとドアが開かなくなることがあります。
- 情報を収集する:テレビやラジオ、インターネットなどで、信頼できる情報を収集します。デマに惑わされないように注意が必要です。
- 余震に備える:大きな地震の後には、ほぼ確実に余震が続きます。本震よりは小さいことが多いですが、油断せず、安全な場所で過ごすように心がけてください。
ホテルの安全性は?ベトナムの建築基準
旅行や出張で滞在するホテルの安全性は、とても気になるところですよね。ベトナムでは、地震に対してどのような備えがされているのでしょうか。ここでは、ベトナムの建築基準と、建物の安全性について解説します。
ユーロコード8に準拠した近代的な基準
現在、ベトナムで建物を建てる際には、「TCVN 9386-1:2012」という国家基準に基づいて耐震設計を行うことが義務付けられています。
この基準は、地震対策の先進地域であるヨーロッパの耐震設計基準「ユーロコード8」を基に作られています。そのため、科学的・技術的に信頼性の高い、近代的な基準であると言えます。
設計の際には、以下のような要素が考慮されます。
- 建設される場所の地震リスクの大きさ
- 建物を建てる地盤の固さや種類
- 建物の高さ、重さ、構造形式
この基準に沿って正しく設計・建設された建物は、その地域で想定される最大級の地震に対しても、倒壊を免れ、人命を守れるように作られています。
新しい建物と古い建物の耐震性
ベトナムの建築基準はしっかりとしたものですが、注意したい点が一つあります。それは、すべての建物がこの新しい基準で建てられているわけではない、という点です。
建物の種類 | 耐震性に関する状況 |
新しい高層ホテルやビル | 現行の厳しい耐震基準(TCVN 9386-1:2012)に沿って建設されているため、耐震性は高いと考えられます。 |
古い中低層の建物や個人経営のホテル | 新しい基準が導入される前に建てられた建物は、耐震性が十分に考慮されていない可能性があります。 |
過去に大きな地震の経験が少なかったため、ベトナムの建設業界では、長らく耐震設計が重要視されてこなかった歴史的背景があります。
ホテル選びで安心を得るために
絶対に安全と言い切ることはできませんが、ホテルを選ぶ際に、比較的新しく建てられた高層のホテルを選ぶことは、一つの安心材料になるかもしれません。
しかし、古い建物であっても、リノベーションによって耐震補強がされている場合もあります。最終的には、万が一揺れを感じた時に、慌てず安全行動をとれるように準備しておくことが最も大切です。
日本との比較でわかるベトナムの地震リスク
地震大国とも呼ばれる日本で暮らしていると、海外の地震リスクは特に気になりますよね。日本の状況を基準にすると、ベトナムの地震リスクはどのように見えるのでしょうか。ここでは、具体的なデータを交えて分かりやすく比較していきます。
圧倒的に違う「地震の頻度」
最も大きな違いは、揺れを感じる「頻度」です。日本では毎日のようにどこかで地震が発生し、体に感じる揺れも珍しくありません。しかし、ベトナムでは日常生活で揺れを感じることは極めて稀です。
具体的な回数を比較すると、その差は歴然としています。
項目 | 日本 | ベトナム |
体に感じる地震の年間回数(目安) | 約2,000回 | 年に数回程度 |
このように、ベトナムで体に感じる地震が起きる頻度は、日本と比べて数百倍から千倍も少ないと言えるでしょう。
想定される揺れの「最大規模」の違い
地震の最大規模についても、両国では大きな違いがあります。この違いを生んでいるのは、国の置かれている地質学的な環境です。
項目 | 日本 | ベトナム |
地質学的な位置 | プレート境界の上 | プレートの内部 |
想定される最大規模 | M8~9クラスの巨大地震 | M6~7クラスの内陸地震 |
日本は複数のプレートがぶつかり合う境界に位置するため、海溝型と呼ばれるマグニチュード8を超えるような巨大地震のリスクに常に備える必要があります。
一方、ベトナムはプレートの内部に位置しているため、日本のような巨大地震が発生する可能性は極めて低いと考えられています。ベトナムで警戒すべきなのは、国内の活断層が動くことによる、より規模の小さい内陸型の地震です。
社会全体の「備えと意識」の違い
地震が頻繁に発生する日本では、緊急地震速報や定期的な避-難訓練、厳格な建築基準など、社会全体で地震に備える仕組みが整っています。
しかし、ベトナムでは地震の経験が少ないため、国民の防災意識は日本ほど高くはありません。防災対策も、頻繁に発生する台風や洪水が中心となっています。
この「備えと意識」の違いは、旅行者や在住者が覚えておくべき重要なポイントです。万が一の際に、周囲の人々が日本と同じように落ち着いて行動するとは限りません。ご自身の安全はご自身で守るという意識を持ち、基本的な知識を身につけておくことが大切になります。
地震速報はどこで?信頼できる情報源は?
日本にいると、地震が発生した際にはテレビやスマートフォンから緊急地震速報が流れてくるのが当たり前になっていますよね。しかし、ベトナムでは同じような感覚で情報を得ることはできません。万が一の時に備え、信頼できる情報源をあらかじめ知っておくことが大切です。
日本のような緊急地震速報はない
まず覚えておきたいのは、ベトナムには日本の「緊急地震速報」のように、揺れが来る直前に警報を発する全国的なシステムは導入されていないという点です。地震が起きた後の情報を、自分で確認しにいく必要があります。
在ベトナム日本国大使館からの安全情報
日本人にとって最も重要な情報源の一つが、在ベトナム日本国大使館です。
大きな地震など、日本人の安全に関わる事態が発生した場合、大使館のウェブサイトや領事メールを通じて注意喚起や安否確認の情報が発信されます。
短期旅行者は「たびレジ」に、3ヶ月以上滞在する方は「在留届」に必ず登録しておくようにしましょう。緊急時に、大使館からの大切な情報を受け取ることができます。
まとめ:ベトナムの地震リスクと賢く付き合うために

記事のポイント
- ベトナムの地震リスクは低いが決してゼロではない
- 巨大地震が少ないのは安定したプレート内にあるから
- 国内に存在する活断層が地震の主な原因である
- 過去にはマグニチュード6.8の地震も記録されている
- 体感できる揺れは年に数回程度と非常に少ない
- 地震リスクは全国一様ではなく北西部で最も高い
- ハノイは直下型、ホーチミンは高層ビルの揺れに注意が必要
- 近代的な耐震基準はあるが古い建物には適用外も
- 日本と比べ地震の頻度、規模、防災意識に大きな差
- 日本のような緊急地震速報システムは存在しない
総括
この記事では、ベトナムの地震に関するリスクの全体像を、その理由から具体的な対策まで詳しく解説してきました。多くの方が持つ「地震のない国」というイメージは、日本と比較すれば決して間違いではありません。しかし、そのイメージを少しだけ更新し、より正確な知識を持つことが、ベトナムでの安全で快適な滞在につながります。
重要なポイントを改めて振り返ってみましょう。ベトナムで巨大地震が起こる可能性は極めて低い一方で、国内には活断層が存在し、過去には被害を伴う中規模の地震が発生した歴史があります。特に、首都ハノイを含む北部地域はリスクが比較的高く、都市部では高層ビル特有の揺れにも注意が必要です。
しかし、これらの事実を知って過度に恐れる必要はまったくありません。むしろ、「リスクはゼロではない」と正しく理解し、万が一揺れを感じた時にどう行動すればよいかを知っておくことが、何よりもの安心材料になります。基本的な安全行動を頭の片隅に置いておくだけで、いざという時の落ち着きは大きく変わるはずです。
この情報が、皆さんのベトタムでの旅行、出張、あるいは生活における漠然とした不安を取り除き、確かな知識という「お守り」として役立つことを心から願っています。