
「タイ米はまずい」は間違い。調理法ひとつで、その概念が覆ります。
「タイ米って、パサパサしてて美味しくないよね…」
もしあなたがそう感じているなら、その記憶は1993年の米騒動まで遡るのではないでしょうか? 当時、スーパーの棚に並んだ見慣れないお米を前に、多くの人が戸惑いを感じたはずです。
しかし、もし「タイ米がまずい」という評価が、歴史的なタイミングと、ほんの少しの知識不足が生んだ「壮大な誤解」だとしたら…?
実は、あのパサパサとした食感こそが、タイ米の欠点ではなく最大の長所。その魅力を引き出す正しい調理法と、最高の相性を持つ料理を知れば、長年のイメージは180度覆ります。この記事は、あなたの30年来の誤解を解き、新しい食の世界の扉を開くためのものです。
●この記事を読んでほしい人
- 過去にタイ米を食べて、まずいと感じたトラウマがある方
- チャーハンやカレーを、もっと本格的にパラパラに美味しく作りたい方
- タイ料理が好きで、その背景にある食文化への理解をより深めたい方
●この記事を読むメリット
- 「タイ米がまずい」と言われ始めた、歴史的な背景と本当の理由がわかります。
- 日本米との科学的な違いを学び、タイ米本来の長所を理解できます。
- 家庭で誰でも簡単にできる、タイ米の美味しい炊き方「湯取り法」を習得できます。
- タイ米の真価が発揮される、具体的な料理(カレー、ガパオライス等)がわかります。
- 食への固定観念が覆り、タイ料理や文化への理解が深まってもっと楽しくなります。
なぜ、私たちはタイ米を「まずい」と感じてしまったのか。そして、どうすれば「最高に美味しい」と感じられるのか。
その全ての答えが、この記事の中にあります。
なぜタイ米はまずいと言われるようになったのか?

すべての始まりは平成の米騒動
「タイ米はまずい」という感覚をお持ちでしたら、その記憶の原点は、おそらく1993年に起きた「平成の米騒動」にあるのではないでしょうか。私自身も、スーパーの棚からお米が消え、多くの家庭が混乱したあの時の光景を鮮明に覚えています。
多くの日本人がタイ米に対して抱くネガティブなイメージは、この社会現象がすべての始まりだったのです。
記録的な冷夏と歴史的な不作
1993年の日本は、記録的な冷夏に見舞われました。長引く梅雨と日照不足が、稲の生育に深刻なダメージを与えたのです。
その年の米の作況指数は「74」。これは「著しい不良」とされる水準を大きく下回る、壊滅的な数字でした。特に東北や北海道の被害は甚大で、青森県では作況指数28を記録するなど、日本の米作りが未曾有の危機に瀕した年でした。
追い打ちをかけた地球規模の天候不順
この異常気象は、単なる偶然ではありませんでした。伏線として、1991年に起きたフィリピン・ピナトゥボ山の巨大噴火が挙げられます。噴火で舞い上がった大量の噴出物が太陽光を遮り、地球全体の気温を低下させた影響が、2年後の日本を襲ったと考えられています。
さらに、冷夏をもたらしやすいエルニーニョ現象も発生しており、日本の食料供給の脆弱性が一気に露呈する形となりました。
脆弱だった国内の米事情
不運はそれだけではありませんでした。日本国内の古米在庫は、前々年からの不作の影響ですでに少ない状態にありました。加えて、長年にわたる減反政策によって米の生産量は需要に対して常にぎりぎりで調整されており、想定外の凶作に対する備えが全くできていなかったのです。
国内外の要因がいくつも重なった結果、日本の米は完全な供給麻痺に陥りました。国民の主食が食卓から消えるという、まさに緊急事態だったのです。
日本に来たのは備蓄用のタイ米
はい、大変失礼いたしました。以下にh3見出し「日本に来たのは備蓄用のタイ米」の本文の続きを生成します。
国内の米不足が深刻化する中、政府はそれまで原則禁じてきた米の緊急輸入という、前例のない決断を下しました。この時、日本の危機的状況にいち早く支援の手を差し伸べてくれたのがタイでした。
しかし、ここで知っておいていただきたい重要な事実があります。当時、私たちの食卓に届けられたタイ米は、輸出用に栽培された高品質なプレミアム米ではなかったのです。その正体は、タイ政府が自国民のために保管していた「備蓄用の米」でした。
商業取引ではなかった支援
当時の日本の要請は非常に緊急性が高く、食糧危機に瀕した日本を救うための、タイ側の善意による人道支援に近いものでした。
元々、日本は米を自給していた国です。そのため、高品質な米を日本向けに大量かつ安定的に輸出できる体制を持っている国は、世界中のどこにも存在しなかったのです。タイから送られてきた備蓄用の米には、普段から輸出されている一級品とは異なる、様々な品質のものが含まれていました。
不安を煽った一部の報道
タイ米のイメージを決定的に悪化させた、もう一つの要因があります。それは、一部メディアによるセンセーショナルな報道でした。
特にワイドショーなどで「タイ米の袋から錆びた釘が見つかった」「ネズミの死骸が混入していた」といった事例が、繰り返し報じられたのです。報道された事例は全体から見ればごく一部だったかもしれませんが、国民の不安を大きく煽り、「輸入米=不衛生で危険」という強烈な心理的バイアスを植え付けてしまいました。
このように、私たちが1993年に口にしたタイ米は、タイ米本来の品質を代表するものではありませんでした。緊急用の備蓄米という特殊な事情と、不安を掻き立てる報道が重なり、「まずい」という評価が固まってしまったのです。
粘りの日本米、パラパラのタイ米
品質や報道の問題に加え、タイ米が「まずい」と感じられた最大の理由は、もっと根本的なところにあります。それは、そもそも私たちが食べている日本米とタイ米が、科学的に全く性質の異なる「別物」だからです。
優劣の関係ではなく、生まれ持った個性が違うのです。この違いを理解することが、30年来の誤解を解く鍵となります。
食感の鍵は二つのでんぷん
少し専門的な話になりますが、お米の食感を決めているのは主成分の「でんぷん」です。このでんぷんには、大きく分けて二つの種類があります。
- アミロペクチン:炊いた時に強い粘りとツヤ、もちもち感を生み出す成分。
- アミロース:粘り気が少なく、パラパラとした食感を生み出す成分。
お米の個性は、この二つの成分のバランスで決まります。
粘りとツヤを生む日本米(ジャポニカ米)
私たちが普段食べているコシヒカリなどの日本米は、「ジャポニカ米」という品種です。ジャポニカ米は、でんぷんの8割以上が粘りのもとであるアミロペクチンで構成されています。
だからこそ、炊きあがりはしっとり、もちもちとした食感になるのです。この強い粘りがあるから、お寿司やおにぎりのように、米同士をくっつける日本の食文化が生まれました。
パラパラ感が長所のタイ米(インディカ米)
一方、タイ米の多くは「インディカ米」という、細長い形をした品種です。インディカ米は、日本米とは対照的にアミロースの含有量が多いのが特徴です。
そのため、炊いても粘り気が少なく、一粒一粒が独立したパラパラ、サラサラとした軽い食感に仕上がります。
1993年に多くの日本人が感じた「パサパサしてまずい」という食感。実は、この感覚こそがインディカ米の欠点ではなく、最大の「長所」だったのです。粘り気が少ないからこそ、カレーやチャーハンといった料理と抜群の相性を見せます。
つまり、タイ米がまずいのではなく、粘り気が強い日本米の基準で評価してしまったための、食文化のすれ違いだったと言えるでしょう。
炊飯器で炊いたのが失敗のもと
お米の性質が根本的に違うことに加え、1993年当時は、タイ米の美味しさを引き出す正しい知識が日本にありませんでした。
粘りの強い日本米を美味しく食べるための道具、つまり日本の電気炊飯器でタイ米を炊いてしまったこと。これこそが、「まずい」という記憶を決定づけた技術的な失敗だったのです。
日本米を炊くために進化した炊飯器
当時の日本の家庭にあった電気炊飯器は、粘り気の強いジャポニカ米を、いかにしっとりふっくらと炊き上げるか、という一点を追求して進化してきた調理器具です。
その日本米に特化した炊飯器に、粘り気が少なくパラパラとしたインディカ米であるタイ米を入れ、同じ設定で炊いてしまったのです。今思えば、当然の結果だったのかもしれません。炊きあがったお米は、多くの日本人が「ポソポソ」「パサパサ」と表現する、全く馴染みのない食感になってしまいました。
これはタイ米の味そのものの問題というよりは、調理方法のミスマッチが生んだ悲劇でした。
事態を悪化させた「ブレンド米」
この状況をさらに悪化させたのが、政府が苦肉の策として推奨した「ブレンド米」です。
不足する日本米にタイ米を混ぜて炊く、という方法でした。しかし、吸水率も最適な炊き時間も全く異なる二種類の米を、同じ釜で一緒に炊くという試みは、食文化への無理解が生んだ最悪の選択でした。
当然ながら、炊きあがりはムラだらけの奇妙な物体になります。日本米はべちゃっとしているのに、タイ米はまだ硬い、といった具合です。この不思議な食感を体験したことで、「やはりタイ米はまずい」という記憶が、さらに強固に日本人の心に刻み込まれてしまったのです。
まずいのではなく日本料理に合わない
これまでの理由をまとめると、結論はとてもシンプルです。タイ米は「まずい」のではなく、粘りの強いお米を前提として築き上げられてきた「日本の食文化に合わなかった」だけなのです。
白米そのものの味や食感を繊細に味わい、お米とおかずを交互に食べる。そんな日本の食事スタイルにおいて、パラパラとした食感で独特の香りを持つタイ米は、残念ながら主役にはなれませんでした。
食文化の文脈を失ったお米
タイに長年住んでいた日本人の、興味深いエピソードがあります。ハーブやスパイスが効いたタイ料理と一緒に食べるタイ米の香りは、食欲をそそる芳香として何の疑問も持たなかったそうです。
しかし、ある日、日本の刺身定食をタイ米で食べた時、その香りが初めて「臭い」と感じられた、というのです。
この話は、食の評価がいかに「文脈」に依存するかを完璧に示しています。繊細な和食の風味とはぶつかってしまうタイ米の個性も、カレーやガパオライスのような力強い料理と一緒になれば、その魅力を最大限に引き立てる要素に変わります。
東南アジアの人たちにしてみれば、自国の料理とタイ米はとてもおいしいものであり、私たちが「タイ米はまずい」と言うのは理解できないし不本意なことです。タイ米への否定的な評価は、本来あるべき食文化の文脈から切り離され、日本米の土俵で無理に評価されたために生まれたものだったのです。
「タイ米まずい」を覆す!現地の絶品料理と食べ方

秘訣は「茹でて蒸らす」湯取り法
タイ米が持つ本来の美味しさを引き出すには、まず「日本の電気炊飯器で炊く」という常識から一度離れる必要があります。30年来の「まずい」という記憶を「美味しい」という感動で上書きする、とっておきの秘訣。それが、パスタのように「茹でて蒸らす」という伝統的な調理法、「湯取り法」です。
アジアの多くの地域で実践されているこの方法を知れば、誰でも家庭で、驚くほどパラパラで美味しいタイ米を炊き上げることができます。
誰でも簡単!湯取り法の炊き方
難しく考える必要はありません。いつもの炊飯器ではなく、少し大きめの鍋を用意するだけです。以下の手順で、タイ米の真価を解き放ってみましょう。
1. 米を洗う(軽く)
日本米のようにゴシゴシと研ぐ必要はありません。タイ米は精米技術が高く、無洗米として使える製品も多いです。表面のホコリをさっと洗い流す程度で十分です。
2. たっぷりのお湯で茹でる
大きめの鍋に、お米がゆったりと踊るくらいの量のお湯を沸かします。沸騰したら米を入れ、焦げ付かないように時々かき混ぜながら7分から10分ほど、好みの硬さになるまで茹でます。
3. ザルにあけて湯を切る
一粒食べてみて、少し芯が残る「アルデンテ」の状態になったら、ザルにあけて手早くしっかりとお湯を切ります。
4. 鍋に戻して蒸らす
湯を切ったお米を、火を止めた熱いままの鍋に戻してください。すぐに蓋をして、そのまま5分から10分ほど蒸らします。鍋の余熱で米の芯まで火が通り、余分な水分が飛ぶことで、理想的なパラパラ・ふっくら食感が生まれます。
この「茹でて蒸らす」という発想の転換こそが、タイ米を最高に美味しく味わうための、最も重要なステップなのです。
カレーや炒飯が驚くほど美味しく
「湯取り法」で炊き上げた、パラパラでふっくらとしたタイ米。このお米が手元にあれば、これまで家庭では難しいと感じていた、ある料理が驚くほど美味しく仕上がります。
かつては「パサパサ」と敬遠されたタイ米の個性が、最高の長所として輝く瞬間です。特に、多くの人が大好きな「炒飯」と「カレー」で、その真価を体験してみてください。
お店の味になる本格炒飯
家庭で炒飯を作ると、どうしてもご飯がべちゃっとしてしまう。そんな経験はありませんか。その主な原因は、日本米が持つ水分と強い粘りにあります。
しかし、水分が少なくパラパラのタイ米を使えば、この悩みは一気に解決します。一粒一粒がダマになることなくきれいにほぐれ、油と旨味をまとってくれます。まるでお店のプロが作ったような、本格的な炒飯が驚くほど簡単に作れるのです。アジアの屋台で食べた、あの感動的な味をご家庭で再現できます。
ルーと絡み合う絶品カレーライス
タイのグリーンカレーはもちろんですが、実は日本のカレーライスにもタイ米は驚くほどよく合います。
粘り気の少ないタイ米は、カレールーの中で溶けたり団子になったりすることがありません。サラサラのルーが、ご飯の一粒一粒にしっかりと絡みつき、ソースの持つスパイスの風味や味わいをストレートに楽しむことができます。
しっとりした日本米とルーが一体化する美味しさとはまた違う、ルーとライス、それぞれの食感と味を同時に楽しめる新しい体験。この組み合わせは、一度味わうとやみつきになるでしょう。
これらの料理は、タイ米が日本米の代用品ではなく、特定の料理においては日本米を凌駕するパフォーマンスを発揮する、素晴らしい食材であることを教えてくれます。
ガパオライスが忘れられない味に
炒飯やカレーでタイ米の新たな魅力に気づいたら、次はいよいよ本場のタイ料理に挑戦してみてはいかがでしょうか。特に、日本でも大人気の「ガパオライス」は、タイ米を使うことで忘れられない一皿になります。
タイ米の真価を最も深く理解できる料理かもしれません。ガパオライスにとって、タイ米は選択肢ではなく、料理のアイデンティティそのものを形作る必須の材料なのです。
すべてを受け止めるお米の懐の深さ
鶏や豚のひき肉を、タイのホーリーバジル(ガパオ)、唐辛子、ナンプラーで香り高く炒めた具。その上に乗った、黄身がとろりとした目玉焼き(カイダーオ)。
これらの力強く、旨味と辛味が凝縮された具材とソース、そして卵の黄身を、粘りの強い日本米で受け止めようとすると、ご飯がべちゃっとした塊になってしまいます。
しかし、パラパラのタイ米なら、その一粒一粒が具材の旨味やソース、卵の黄身を余すことなく吸収しながらも、決して形を崩しません。スプーンの上で具とご飯が理想的に混ざり合い、口の中で最高のハーモニーを奏でるのです。
私がバンコクの食堂で出会った味
私自身、タイを旅する中で、街角の食堂で食べたガパオライスの味が今でも忘れられません。炎を上げる中華鍋、リズミカルに響くお玉の音、そしてホーリーバジルが投入された瞬間に立ち上る、えもいわれぬ芳香。
運ばれてきた一皿は、真っ白なタイ米の上に、濃い色のガパオ炒めと揚げ焼きにされた目玉焼きが乗っているだけの、とてもシンプルなものでした。しかし、目玉焼きを崩し、すべての具材をご飯と混ぜ合わせて口に運んだ瞬間の感動は、筆舌に尽くしがたいものがありました。
この時、主役はガパオ炒めだけでなく、そのすべてを受け止めるタイ米でもあるのだと、はっきりと理解したのです。この料理は、このお米があって初めて完成するのだと。ぜひ、この本物の組み合わせを体験してみてください。
高温多湿な気候が育んだお米の個性
ガパオライスのような現地の料理を味わうと、ある一つの疑問が浮かぶかもしれません。なぜこの地域では、これほどパラパラとした食感のお米が主食になったのでしょうか。
その答えは、タイをはじめとする東南アジアの気候風土に隠されています。タイ米の個性は、高温多湿という環境の中で、食文化とともに育まれてきた必然の結果なのです。
暑さを乗り切るための食の知恵
一年を通して気温も湿度も高い地域では、食欲が落ちやすくなります。そのため、現地の料理には、食欲を刺激するための様々な工夫が凝らされています。
唐辛子のシャープな辛味、ハーブの爽やかな香り、ナンプラーの塩気と旨味、ライムの酸味。こうした力強い味付けは、暑さの中でも食事を美味しく、そして楽しく食べるための先人たちの知恵です。また、油を使った炒め物や、スパイスの効いた汁気の多い料理が多いのも特徴です。
料理と響きあうお米の食感
こうした風味豊かで、時には脂分や汁気も多い料理に、もし日本米のような粘り気の強いご飯を合わせたらどうなるでしょうか。おそらく、口の中がべったりとして、すぐに重たく感じてしまうはずです。
私が東南アジアを旅して感じたのは、まさにこの点でした。パラパラと軽い食感のタイ米は、力強い料理の味をしっかりと受け止めながらも、口の中をさっぱりとさせてくれます。一皿食べ終えた後の感覚が、日本米で同じような料理を食べた時よりも、ずっと軽快なのです。
タイ米のパラパラとした個性は、高温多湿の気候下で生まれた料理を、最も快適に美味しく食べるために研ぎ澄まされたもの。お米と料理、そして気候とが完璧に調和した、美しい食文化の姿がそこにはあります。
旅先でこそわかる本当の美味しさ
ここまでタイ米の本当の姿について、様々な角度からお話ししてきました。1993年の米騒動という歴史的な誤解、日本米との科学的な違い、そして「湯取り法」という正しい炊き方や、料理との相性。
しかし、タイ米の本当の美味しさを知るための、最後の、そして最高のスパイスがあります。それは、現地の空気ごと味わう「旅の体験」です。
30年来の誤解がとける瞬間
日本でも、今では本格的なタイ料理を食べられるお店が増えました。もちろん、家庭で調理してその美味しさを知ることも素晴らしい第一歩です。
ですが、ぜひ一度、タイを訪れてみてください。熱気あふれる屋台の活気、むっとするような湿度、照りつける太陽。そんな環境の中で、汗をかきながら食べる一皿のガパオライスやグリーンカレーは、格別の味がします。
その時、きっと腑に落ちるはずです。パラパラとしたお米の軽やかさが、この気候の中でどれほど心地よいか。食欲をそそる香りが、スパイシーな料理とどれほど見事に調和するか。
日本で「まずい」と感じた記憶は遠い過去のものとなり、「この料理には、このお米しかない」という確信に変わるでしょう。その一食の体験が、30年来の誤解をすっきりと解き放ってくれるのです。
あなたの食の世界は、もっと豊かになるはずです。次の旅では、ぜひ現地の食堂の椅子に座り、その土地のお米とその土地の料理が織りなす、完璧なマリアージュを心ゆくまで楽しんでみてください。
まとめ:タイ米 は「まずい」のイメージを「美味しい」に

記事のポイント
- 1993年の米騒動で緊急輸入されたのが「まずい」という記憶の原点である
- 当時日本に来たのは輸出用の一級品ではなく、タイ政府の非常用備蓄米だった
- 日本米(ジャポニカ米)とタイ米(インディカ米)は、でんぷんの質が違う全くの別物である
- 粘りの強い日本米に特化した炊飯器で炊いたことが、食感を損なう原因となった
- 性質が異なる米を混ぜた「ブレンド米」という食べ方が、さらに評価を悪化させた
- まずいのではなく、粘り気を前提とする白米中心の日本の食事に合わなかっただけである
- パラパラした食感は、チャーハンやカレー、ガパオライスでこそ最高の長所となる
- 独特の香りは繊細な和食とぶつかるが、スパイシーな料理の風味を豊かに引き立てる
- パスタのように茹でて蒸らす「湯取り法」が、タイ米の美味しさを引き出す正しい調理法だ
- パラパラの食感は、高温多湿な気候で生まれた現地の食文化と料理に最適化された結果である
総括
「タイ米はまずい」という長年の疑問を胸にこの記事を読んでくださり、ありがとうございます。その記憶のほとんどが、1993年の米騒動という特殊な状況と、日本米の常識で評価してしまったことによる誤解だった、ということがお分かりいただけたでしょうか。
タイ米は決して「まずい」お米なのではなく、日本米とは違う個性と魅力を持った、世界で愛される素晴らしい食材です。その真価は、正しい調理法と、その個性が活きる料理との出会いによって、はじめて解き放たれます。
かつて「パサパサしている」と感じたあの食感こそが、炒飯をプロの味にし、カレーをよりスパイシーに感じさせ、ガパオライスの旨みをすべて受け止める最高の長所だったのです。
この記事をきっかけに、ぜひ一度「湯取り法」で炊いたタイ米を味わってみてください。30年来の記憶が「美味しい」という新しい感動に上書きされるはずです。当ブログでは、このように食や旅を通して世界を再発見する楽しさを発信しています。今回の記事が、あなたの食の世界をより豊かにする一助となれば幸いです。