
インドネシアでのタクシー利用に不安な方へ。タクシーアプリ完全攻略法を教えます。
「メーターを使ってくれない」「お釣がないと言われる」「わざと遠回りをされる」……。
かつてインドネシアのタクシーといえば、乗るたびに運転手との知恵比べが必要で、目的地に着く頃にはドッと疲れてしまうものでした。
私の妻はインドネシア人なのですが、昔、二人でジャカルタを歩いていた頃は、流しのタクシーを捕まえるのにも一苦労したものです。しかし、今は本当に良い時代になりました。インドネシアのタクシーアプリを使えば、言葉がわからなくても、適正価格で安全に移動できるからです。
最初に、私から一つだけ忠告させてください。「アプリなんて、現地に着いてからダウンロードすればいいや」と思っていませんか?
実は、日本での事前準備を怠ると、現地でアプリが使えずに途方に暮れてしまうトラブルが多発しているのです。
この記事では、東南アジアの旅を愛する私が、失敗しないアプリの選び方から、意外と知られていない登録の落とし穴まで、実体験を交えて分かりやすく解説します。
●この記事を読むメリット
- Gojek、Grab、Bluebirdなど、インドネシアの主要タクシーアプリの特徴と賢い使い分けが分かります。
- 現地で「SMSが届かない!」と焦らないための、日本で済ませるべき登録手順が理解できます。
- 日本のクレジットカードが弾かれる問題への対策と、安全な決済設定を知ることができます。
- バリ島とジャカルタ、それぞれの空港で迷わずスムーズに配車する具体的な攻略法が身につきます。
- ぼったくりやトラブルを回避し、女性や一人旅でも安心して移動するための防犯知識が得られます。
せっかくのインドネシア旅行、移動のストレスで台無しにしたくはありませんよね?
あなたの旅が快適で安全なものになるよう、私が知っている全てのノウハウを包み隠さずお話しします。ぜひ最後までお付き合いください。
インドネシアの主要タクシーアプリ3社を徹底比較

インドネシアで移動手段を探そうとすると、いくつかのアプリが出てきて「結局どれを使えばいいの?」と迷ってしまうことでしょう。
ここでは、代表的な3つの勢力(スーパーアプリ、老舗タクシー、格安新規参入)の特徴を整理し、旅のスタイルや目的に合わせた最適な選び方を解説します。
東南アジアの2大巨頭!GojekとGrabの特徴
まず押さえておきたいのが、街中で緑色のジャケットを着たバイク集団を見かけない日はないほど浸透している、Gojek(ゴジェック)とGrab(グラブ)です。
この2社は単なる配車アプリではなく、フードデリバリーから決済まで何でもできる「スーパーアプリ」です。インドネシア発のGojekが約43%、シンガポール系のGrabが約39%のシェアを分け合っており、まさに市場の2トップと言えます。
●GojekとGrabの主な特徴
| 特徴 | 詳細 |
| 運営モデル | アグリゲーター型(自社で車を持たず、個人ドライバーとマッチング) |
| 車種 | 四輪車(Car)だけでなく、二輪車(Bike/Ojek)が充実 |
| メリット | 車両数が圧倒的に多く、どこでもすぐに捕まる。食事や荷物配送も可能。 |
| デメリット | 「配車ガチャ」のリスクがある。 |
私たち日本人が特に注意したいのが、この「配車ガチャ」という要素です。
GojekやGrabのドライバーはあくまで個人事業主(ギグワーカー)です。そのため、新車の快適なSUVに当たることもあれば、タバコの臭いが染み付いた古い車や、運転が少し荒いドライバーに当たってしまうこともあります。
「とりあえず移動できればいい」「安く済ませたい」「渋滞をバイクで抜けたい」というシチュエーションでは、この2つのアプリが最強の味方になります。私は普段、近くのちょっとした買い物には、主にGrabを使用しています
絶対に失敗したくないならBluebird一択
「知らない人の車に乗るのは少し怖い」「空港へは確実に時間通り行きたい」。そう思うなら、迷わずBluebird(ブルーバード)を選んでください。
Bluebirdは、インドネシアで長年愛されてきた老舗タクシー会社です。GojekやGrabとは決定的に異なり、会社が車両を所有し、ドライバーを正社員として雇用・教育しています。
●Bluebirdが日本人旅行者に推奨される理由
- 品質の均一化(脱ガチャ):ドライバーは制服を着用し、研修を受けているため、接客が丁寧です。車両も定期的に整備されたトヨタ車(トランスムーバー等)が中心で、清潔感が保たれています。
- 「確定運賃(Fixed Price)」が選べる:専用アプリ「MyBluebird」を使えば、予約時に「メーター制」か「確定運賃」かを選べます。渋滞がひどいジャカルタでは、メーターが上がるのを見てハラハラするより、最初から金額が決まっている確定運賃の方が精神的に楽なことが多いです。
- 安心のセキュリティ:万が一、車内にスマホや財布を忘れても、コールセンターと追跡システムがしっかりしているため、手元に戻ってくる確率が格段に高いです。
実は、Gojekアプリの中にも「GoBluebird」というメニューがあり、そこからBluebirdの車両を呼ぶことも可能です。しかし、前述した「確定運賃」の選択などは本家アプリ「MyBluebird」独自の機能ですので、私は必ずMyBluebirdも別途インストールすることをお勧めしています。
格安だが注意も必要!MaximとinDriveの活用法
旅慣れた方や、長期滞在でとにかくコストを抑えたい方には、Maxim(マキシム)やinDrive(インドライブ)という選択肢もあります。これらは「チャレンジャー」として価格競争を仕掛けているアプリです。
- Maxim:ロシア発の企業で、地方都市でも意外と使えたりします。大手2社より安い傾向にありますが、車両の質やドライバーの英語力は、正直なところ「値段なり」です。
- inDrive:非常にユニークなのが「運賃交渉制」を採用している点です。アプリが推奨価格を出し、利用者が「この金額なら払う」と希望額を入力、それに同意したドライバーが迎えに来るシステムです。手間はかかりますが、市場原理に基づいた最安値で移動できる可能性があります。
ただし、還暦を過ぎた私個人の意見としては、数百円を節約するためにトラブルのリスクを負うよりは、BluebirdやGrabの安心感を買う方が、結果的に楽しい旅行になると感じています。これらは「上級者向けのサブアプリ」として覚えておく程度で良いでしょう。
【重要】出発前に日本で済ませるべきアプリ登録手順

多くの日本人旅行者が現地到着直後に直面する最大のトラブル、それは「アプリは入れたけれど、認証ができずに使えない」という事態です。
ここでは、空港で途方に暮れないために、日本を出発する前に必ず済ませておくべき技術的な準備と、正しいアプリの選び方について解説します。
現地では手遅れ?SMS認証コードが届かない問題
「アプリなんて、現地の空港に着いてからWi-Fiにつないでダウンロードすればいい」そう軽く考えていませんか? 実は、それが落とし穴なのです。
GojekやGrab、MyBluebirdといったアプリを使い始めるには、携帯電話番号によるSMS認証(ショートメッセージによる本人確認)が必須です。しかし、日本の携帯番号(+81)を使って現地で登録しようとすると、認証コード(OTP)が届かないというトラブルが頻発しています。
●なぜSMSが届かないのか?
- 国際ローミングの制限:契約している日本のキャリアやプランによっては、海外でのSMS受信が制限されている場合があります。
- スパムフィルター:海外からの自動送信メッセージを、携帯会社や端末の設定が「迷惑メール」としてブロックしてしまうケースがあります [引用元:Gojek Help Center]。
現地で認証コードが届かず、サポートセンターに問い合わせようとしても、回答が来る頃には旅が終わっている……なんてことも珍しくありません。
解決策はたった一つ、「日本にいる間に登録を完了させること」です。
日本国内でアプリをインストールし、SMS認証を済ませて、トップ画面が表示される状態にしてから飛行機に乗ってください。これだけで、到着後のトラブルの9割は防げます。
データ専用eSIMは危険!音声通話付きSIMを選ぶ理由
最近は、SIMカードを差し替えずに使える「eSIM」が便利になり、多くの旅行者が利用しています。しかし、ここで注意が必要なのがSIMの種類です。
旅行用の安価なeSIMの多くは「データ通信専用(Data Only)」です。これを選んでしまうと、電話番号が付与されず、当然SMSも受信できません。
「日本で認証してきたから大丈夫」と思っても、現地でアプリが強制ログアウトされたり、セキュリティチェックで再認証を求められたりすることがあります。その際、手元のスマホがデータ専用SIMだと、認証コードを受け取る手段がなくなり、アプリが完全に使えなくなってしまうのです。
●私の推奨するSIM選び
現地の通信ショップや空港でSIMを購入する場合、あるいは事前にAmazon等で購入する場合でも、必ず「音声通話・SMS付き(Voice & SMS)」のプランを選んでください。
数百円の違いですが、この機能があるだけで、アプリの再認証だけでなく、ドライバーから電話がかかってきた時の対応や、緊急時の連絡手段としても命綱になります。
類似アプリに注意!本物のMyBluebirdを見分ける
最後に、意外と多い「間違い」についてお伝えします。
先ほどおすすめしたBluebirdタクシーのアプリですが、App StoreやGoogle Playで「Bluebird」と検索すると、全く別のアプリが出てくることがあります。
特に間違えやすいのが、「Bluebird Languages」という語学学習アプリです。青い鳥のアイコンが似ているため、誤ってこちらをダウンロードし、「タクシーが呼べない!」と慌てる方がいらっしゃいます。
●本物のアプリを見分けるポイント
- アプリ名称:正しくは『MyBluebird』です。
- 開発者名:『PT Blue Bird Tbk』と記載されているか確認してください。
- アイコン:青い背景に、白い鳥が右を向いて飛んでいるシンプルなデザインです。
また、GojekやGrabについても、似たような名前のガイドアプリや偽アプリが存在する可能性があります。必ず公式のリンクや、評価数・レビュー数が多いものを確認してダウンロードするようにしましょう。些細なことですが、旅の入り口で躓かないための重要なチェックポイントです。
クレカが弾かれる?決済設定の落とし穴と解決策

アプリの登録まではできたのに、いざ支払い設定をしようとするとエラーが出て先に進めない。そんな経験はありませんか?
ここでは、日本のクレジットカードが使えない主な原因と、私が愛用している「Wise」を使った賢い解決策、そして現地で困らないための現金のルールについてお話しします。
日本のクレジットカードが登録できない原因
日本で普段使っているクレジットカードをGojekやGrabに登録しようとすると、なぜか「拒否されました」というエラーメッセージが出ることが頻繁にあります。私も最初は、カードの限度額オーバーかと思いカード会社に電話したほどですが、実は原因は別のところにありました。
●主な2つの原因
- 不正利用防止システムの過剰反応:東南アジアでの決済リクエストに対し、日本のカード会社のセキュリティシステムが「不正利用の疑いあり」と判断し、自動的にロックをかけてしまうケースです [引用元:Gojek Help Center]。
- 3Dセキュア認証の壁:カード登録時に本人確認のためのワンタイムパスワードが求められることがありますが、前述した通り、海外ではSMSが届かないことがあります。そのため、認証プロセスを完了できず、登録が弾かれてしまうのです。
特にJCBやAMEXは利用できる場所が限られることが多く、VISAやMastercardでも、日本の発行元のセキュリティポリシーによっては弾かれる確率が高いのが現状です。
手数料もお得!Wiseデビットカードが最強の解決策
「じゃあ、どのカードなら使えるの?」と聞かれたら、私は迷わず**「Wise(ワイズ)デビットカード」**をお勧めしています。これを作るようになってから、私の旅のストレスは劇的に減りました。
Wiseは、複数の通貨を一つのアカウントで管理できるサービスです。アプリ内で事前に日本円を「インドネシア・ルピア」に両替しておけば、現地のデビットカードと同じように決済されます。
●Wiseカードを使うメリット
- 決済成功率が高い:現地通貨(ルピア)での決済となるため、海外利用として弾かれるリスクが格段に低くなります。
- 手数料が圧倒的に安い:一般的な日本のクレジットカードを海外で使うと、1.6%〜2.2%程度の海外事務手数料が上乗せされますが、Wiseなら実勢レートに近い為替レートで両替でき、手数料を大幅に節約できます [引用元:Wise公式サイト]。
出発前に日本でカードを発行しておく必要はありますが、その価値は十分にあります。
システム障害に備えて少額の現金は必ず携帯する
便利なアプリ決済ですが、100%依存するのは危険です。インドネシアでは、突然のシステムメンテナンスや通信障害で、電子決済が一時的に使えなくなることが稀にあります。また、ドライバー側のアプリの不具合で「Cash(現金)で払ってくれ」と頼まれることもゼロではありません。
そんな時の「フェイルセーフ(安全装置)」として、常に少額の現金(ルピア)を財布に入れておきましょう。
●用意すべき紙幣
特に2,000ルピアから20,000ルピア程度の小額紙幣を多めに持っておくことが重要です。100,000ルピア札(最高額紙幣)を出すと、ドライバーが「お釣りがない(Kembalian tidak ada)」と困ってしまい、結局お釣りを諦める羽目になることがよくあるからです。
現地コンビニでチャージする裏技を知っておく
もしクレジットカードもWiseも使えず、手持ちの現金も心許ない……そんな時の最終手段として、「コンビニでの現金チャージ(トップアップ)」という方法を覚えておいてください。
Gojekの電子マネー「GoPay」やGrabの「OVO」は、街中にあるコンビニ(IndomaretやAlfamart)のレジで、現金を使ってチャージすることができます。
●コンビニチャージの手順
- レジに行き、店員に「Top Up GoPay(トップアップ ゴジェック)」と伝えます。
- アプリに登録している携帯電話番号を伝えます(アプリ画面を見せるのが確実です)。
- チャージしたい金額(例:100,000ルピア)を現金で支払います。
日本のクレジットカードからGoPayなどのウォレットに直接チャージすることは、インドネシアの金融規制により原則できません [引用元:Gojek Help Center]。そのため、この「コンビニでの現金チャージ」は、現地で電子マネー残高を増やしたい時に使える非常に有効な裏技なのです。
失敗しない使い分け!安さのGojekと安心のBluebird

インドネシアでの移動を快適にする鍵は、一つのアプリに固執せず、状況に合わせてアプリを使い分ける「二刀流」ならぬ「三刀流」にあります。
ここでは、渋滞、天候、目的に応じて、どのアプリを選ぶのが最も賢い選択なのか、私の経験に基づいた使い分けの極意を伝授します。
近距離や渋滞時は「バイクタクシー」が最速
ジャカルタの渋滞は、世界でも有数の悪名高さです。一度ハマると、数キロ進むのに1時間以上かかることも珍しくありません。そんな時、車の中に閉じ込められてイライラするのは健康にも良くありませんよね。
もし、あなたが一人旅で、荷物も少ないのであれば、迷わずGojekの「GoRide」やGrabの「GrabBike」といったバイクタクシー(Ojek)を選んでください。
●バイクタクシーのメリット
- 渋滞知らず:車と車の隙間を縫ってスイスイ進むため、到着時間が圧倒的に早いです。
- コストパフォーマンス:四輪車の半額以下で移動できることがほとんどです。
多くの人が、近所の市場(パサール)への買い物や友人と会う時の短距離移動には、もっぱらバイクを使っています。「車だといつ着くか分からないから」です。
ヘルメットはドライバーが用意してくれますが、衛生面が気になる方は、薄手のインナーキャップやハンカチを持参して、頭に巻いてから被ると良いでしょう。風を切って走る爽快感は、東南アジアの旅の醍醐味の一つですよ。
「ガチャ」を回避!大事な移動はBluebirdを指名
一方で、空港へ向かう時や、ビジネスでの移動、あるいは夜間に夫婦でディナーに行くような場面では、GojekやGrabの一般車(Car)は避けた方が無難かもしれません。
以前の記事でも少し触れましたが、個人ドライバーの車は「当たり外れ(ガチャ)」が大きいです。私も過去に、強い芳香剤の匂いで車酔いしたり、サスペンションがへたった車で腰が痛くなったりした経験があります。
「絶対に遅れられない」「快適に移動したい」という時は、Bluebird一択です。
彼らは自社で整備工場を持ち、車両(主にトヨタ車)の状態を常に万全に保っています。ドライバーもしっかり教育されており、道を知り尽くしています。
特に、空港への移動などで荷物が多い場合、Gojekの小型車だとトランクに入りきらないリスクがありますが、Bluebirdのステーションワゴンタイプなら安心です。数百円の差で「確実な安心」が買えるなら、安いものだと思いませんか?
雨天時は要注意!料金高騰とメーター制の逆転現象
インドネシアのスコール(突然の豪雨)は強烈です。そして、雨が降り始めると同時に発生するのが、GojekやGrabの「ダイナミックプライシング(価格高騰)」です。
需給バランスによって価格が決まるこれらのアプリでは、雨で需要が急増すると、通常時の2倍、時には3倍以上の運賃が表示されることがあります。これを「サージ(Surge)」と呼びます。
●ここで起きる「逆転現象」
面白いことに、このような状況下では、Bluebirdの「メーター料金」の方が安くなるという逆転現象が起きます。Bluebirdのメーター料金は距離と時間に基づく固定レートであり、天候によって単価が変わることはないからです。
雨宿りをしながらアプリを開き、Grabの表示価格に驚いたら、すぐにMyBluebirdアプリを開いてみてください。あるいは、目の前を走る空車のBluebirdを手を挙げて止めるのも賢い手です。デジタルとアナログ、両方の手段を持っておくことが強みになります。
確定運賃とメーター制、どちらが得か見極めるコツ
Bluebirdの専用アプリ「MyBluebird」には、予約時に「Fixed Price(確定運賃)」と「Metered(メーター制)」を選択できる素晴らしい機能があります [引用元:Bluebird Group公式サイト]。
「どっちがお得なの?」とよく聞かれますが、私の判断基準は以下の通りです。
- Fixed Price(確定運賃)を選ぶべき時
- 激しい渋滞が予想される時:メーター制だと、渋滞で止まっている間も時間距離併用制で料金が上がり続けますが、確定運賃ならどれだけ時間がかかっても料金は変わりません。精神衛生上、こちらが断然おすすめです。
- 地理に不慣れな時:「遠回りされているんじゃないか?」と疑心暗鬼になりたくないなら、最初に金額を固定してしまいましょう。
- Metered(メーター制)を選ぶべき時
- 早朝や深夜、道が空いている時:スムーズに走れる場合、確定運賃(少し高めのマージンが含まれていることが多い)よりも、メーター制の方が安くなる傾向があります。
慣れないうちは、「安心料」としてFixed Priceを選んでおくのが無難です。数十円〜百円程度の差で、メーターを凝視するストレスから解放されるのですから、安いものです。
バリ島とジャカルタで異なる空港配車の攻略法

同じインドネシアでも、観光地のバリ島と首都ジャカルタでは、空港における配車アプリの使い勝手やルールが全く異なります。
到着ロビーを出た瞬間に「どこに行けばいいの?」と迷子にならないよう、それぞれの空港特有の「正しい乗り方」を事前に予習しておきましょう。
バリ島・ングラライ空港はGrab Loungeを活用する
バリ島の玄関口、ングラ・ライ国際空港(DPS)に到着すると、到着ロビーを出た瞬間から「タクシー?タクシー?」という客引きの熱烈な歓迎(?)を受けます。初めての方は圧倒されるかもしれませんが、これらは丁重にお断りして、まずは「Grab Lounge(グラブ・ラウンジ)」を目指してください。
バリ島の空港には、Grabが公式に運営する専用ラウンジが設置されています。
●Grab Loungeの利用手順
- 場所を探す:国際線到着ロビーを出て、両替所やカフェ(スターバックスなど)を通り過ぎ、駐車場方面へ少し歩くと、鮮やかな緑色の看板(Totem)が見えてきます。
- スタッフに頼る:ラウンジには緑色のシャツを着たスタッフが常駐しています。アプリの操作が不安なら、スタッフに行き先を告げれば配車を手伝ってくれます。
- 快適に待つ:外は蒸し暑いですが、ラウンジ内はエアコンが効いており、椅子に座ってドライバーの到着を待つことができます [引用元:Grab Indonesia公式サイト]。
空港公認のサービスなので、法外な値段をふっかけられる心配もありません。バリ島初心者の方は、まずここを目指すのが鉄則です。
徒歩で敷地外へ?バリ島で安く乗るための裏技
もしあなたが、「体力には自信があるから、少しでも安く移動したい」というバックパッカー気質の旅行者なら、「空港の敷地外へ歩く」という裏技があります。
実は、空港内のGrab Loungeから配車すると、運賃に「空港サーチャージ(特別手数料)」が加算されます。しかし、空港のゲートを徒歩で出て、フェンスの外(一般道路)から配車手配をすると、このサーチャージが外れ、通常の市中価格で利用できるのです。
●この裏技の注意点
- 距離と暑さ:到着ロビーから敷地外までは、徒歩で5分〜10分ほどかかります。バリの強烈な日差しの中、大きなスーツケースを引きずって歩くのは想像以上に過酷です。
- 治安:夜間の到着や、女性一人の場合はお勧めしません。
私個人としては、数百円程度の節約のために汗だくになるよりは、素直にGrab Loungeを利用するか、次に紹介するような送迎サービスを使う方が、リゾート気分を損なわずに済むと思います。
ジャカルタ空港は専用乗り場かGoldenbirdで快適に
一方、ビジネス客が多いジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港(CGK)は、よりシステム化されています。
GojekやGrabを利用する場合、ターミナルごとに決められた「Pick-up Point(配車専用乗り場)」へ移動する必要があります。到着ロビーを出ると、緑色の看板で案内が出ているので、それに従って移動してください。
しかし、ジャカルタの空港は非常に広く、乗り場まで結構歩かされることがあります。また、雨天時や金曜の夜などは、タクシー待ちの大行列ができることもしばしばです。
●並びたくない大人の選択:Goldenbird
そんな時、おすすめなのが「Goldenbird(ゴールデンバード)」です。
これはBluebirdグループが提供するハイヤーサービスで、到着ロビー内にあるカウンターで直接申し込みができます。
- 即時手配:アプリでドライバーを探す手間がなく、カウンターで手続きすればすぐに車を回してくれます。
- 定額制:高速道路料金込みの定額プラン(Fixed Price)が用意されており、ジャカルタ名物の大渋滞に巻き込まれても追加料金が発生しません [引用元:Bluebird Group公式サイト]。
長いフライトの後、蒸し暑い屋外で車を待つ必要がないのは、何にも代えがたい快適さです。
荷物が多いなら高級タクシーSilverbirdも検討範囲
ゴルフバッグや家族全員分の大型スーツケースがある場合、通常のタクシーやGrabCar(小型車が多い)では荷物が乗り切らないリスクがあります。
そんな時は、「Silverbird(シルバーバード)」を検討してみてください。
これは黒塗りの高級タクシーで、車種はメルセデス・ベンツやトヨタ・アルファード、最近ではテスラなどのEVも導入されています。
●Silverbirdのメリット
- 広々とした車内:ミニバンタイプのアルファードなら、荷物が多くても余裕で積載できます。
- 優先レーン:一部の空港エリアでは、一般車とは異なる優先レーンを利用できる場合があり、スムーズに出発できます。
価格は通常のBluebirdの1.5倍〜2倍程度(市内まで約2,000円〜3,000円前後)ですが、日本のタクシー料金と比べればまだまだ割安です。旅の疲れをホテルに持ち込まないための「投資」と考えれば、決して高くはない選択肢ですよ。
ぼったくり回避!安全に利用するための防犯対策

便利なタクシーアプリですが、見知らぬ土地で、見知らぬ人の車に乗るという行為にリスクがゼロなわけではありません。
ここでは、アプリのテクノロジーを活用した「自分の身を自分で守るための防犯テクニック」をご紹介します。
家族に位置情報を送るShare Trip機能を必ず使う
特に女性の一人旅や、夜遅い時間の移動で不安を感じる方に、これだけは絶対にやってほしい設定があります。それが、「Share Trip(乗車情報の共有)」機能です。
これは、自分が乗っている車の現在地、ルート、ドライバーの名前やナンバープレートといった情報を、リアルタイムで家族や友人に送信できる機能です。
●Share Tripのすごいところ
私がこの機能を素晴らしいと思うのは、「リンクを受け取った側は、アプリを持っていなくても追跡できる」という点です。
共有されたリンクを開くと、ブラウザ上で地図が表示され、車がどこを走っているかがリアルタイムで分かります。つまり、日本にいる家族にLINEでリンクを送っておけば、遠く離れた場所からでもあなたの移動を見守ってもらえるのです [引用元:Gojek Help Center]。
「今、タクシーに乗ったよ」というメッセージと共に、このリンクをポンと送る。たったこれだけの手間で、万が一の連れ去りや、不当な遠回りを未然に防ぐ抑止力になります。
忘れ物リスクを減らす!フリート所有型を選ぶメリット
旅先で最も避けたいトラブルの一つが「忘れ物」です。スマホ、財布、パスポート……。タクシーを降りた後に「あ!」と気づいても、後の祭りというケースは少なくありません。
ここでも、アプリ選びが運命を分けます。
GojekやGrabのドライバーは個人事業主(ギグワーカー)であるため、もし忘れ物をしても、ドライバーが「気づかなかった」「次の客が持っていった」と言えば、それ以上追及するのは非常に困難です。
一方で、Bluebirdは会社が車両を所有・管理(フリート所有型)しています。
彼らは厳格な遺失物管理システムを持っており、コールセンターに連絡すれば、どの車両に乗っていたかを特定し、ドライバーに直接連絡を取ってくれます。実際に、私の知人がBluebirdにスマホを忘れた際、数時間後にはホテルまで届けてもらえたという事例がありました。
「貴重品を持っている」「少し疲れていて注意散漫になっている」。そんな時は、多少高くても回収率の高いBluebirdを選ぶのが、危機管理として賢明な判断です。
万が一のトラブル時はアプリ内通報ボタンを活用
最後に、本当に危険を感じた時のための「緊急ボタン」の存在を知っておいてください。
各アプリの乗車画面には、盾のマークや「SOS」「Emergency」と書かれたボタンが表示されています。これを押すと、提携している警備会社や警察、あるいは事前に登録した緊急連絡先へ即座に通報される仕組みになっています [引用元:Grab Safety Center]。
- ドライバーが明らかに違う方向へ向かっている
- 身の危険を感じる言動がある
そう感じたら、躊躇せずにこのボタンを利用してください。もちろん、実際に使う場面に遭遇しないのが一番ですが、「いざとなれば助けを呼べる」と知っているだけで、心に余裕が生まれます。
テクノロジーは進化していますが、最終的に身を守るのは「知識」と「準備」です。これらの機能を使いこなし、どうか安全で楽しいインドネシアの旅を満喫してください。
インドネシアのタクシーアプリを使いこなそう

記事のポイント
- インドネシアのタクシーアプリはGojek、Grab、Bluebirdの3社を状況に合わせて使い分ける
- SMS認証コードが届かないトラブルを防ぐため、アプリ登録は必ず日本出発前に済ませる
- 現地SIMはデータ専用ではなく音声通話付きを選び、緊急時の連絡手段を確保する
- クレジットカードが弾かれる場合はWiseデビットカードやコンビニでの現金チャージを活用する
- 渋滞時の短距離移動はバイクタクシーを利用し、空港など確実な移動にはBluebirdを指名する
- 雨天時はアプリの料金高騰に注意し、Bluebirdのメーター制との価格差を見極める
- バリ島空港ではGrab Lounge、ジャカルタ空港では専用乗り場やGoldenbirdを利用してスムーズに乗車する
- ぼったくりやトラブルを避けるため、Share Trip機能で位置情報を家族や友人と共有する
総括
ここまで読んでくださったあなたなら、もう現地の移動に不安を感じる必要はありません。Gojek、Grab、そしてBluebird。これらインドネシアのタクシーアプリは、単なる移動ツールではなく、ボッタクリやトラブルからあなたの旅を守ってくれる最強のお守りです。
言葉がわからなくても、交渉が苦手でも大丈夫。これらのアプリを正しく準備しておけば、妻と私がそうしてきたように、あなたもまるで地元住民のように自由に街を楽しみ、この国の熱気と優しさに深く触れることができるはずです。
さあ、準備は今ここから始まります。現地に着いてから慌てないように、まずは手元のスマホにアプリをダウンロードして、日本にいる間に登録を済ませてしまいましょう。あなたの旅が素晴らしいものになりますように。
