
対岸の火事ではない? 台湾地震南海トラフ、科学が示す真実と備えのすべて。
2024年4月に発生した台湾での大きな地震を受け、「日本の南海トラフ巨大地震も、いよいよ近いのではないか…」と、不安な気持ちになった方も多いのではないでしょうか。
同じフィリピン海プレート上で起きていることから、二つの地震の関連性を指摘する声は後を絶ちません。しかしその一方で、ネット上には科学的根拠の乏しい情報やデマも溢れており、「一体何を信じれば良いのか分からない」というのが正直なところかもしれません。
この記事では、最新の科学的知見に基づき、台湾地震南海トラフの複雑な関係性をどこよりも分かりやすく解き明かしていきます。過度な不安を煽るのではなく、正しい知識を持つことで、冷静な判断と本当に必要な備えに繋げることを目的としています。
●この記事を読んでほしい人
- 台湾地震が南海トラフ地震の前兆ではないかと不安に感じている人
- 科学的な根拠に基づいた、信頼できる情報だけを知りたい人
- 地震の噂やデマに惑わされず、今すべきことを冷静に考えたい人
●この記事を読むメリット
- 台湾と南海トラフで地震が起きる「仕組みの根本的な違い」が分かります。
- なぜ「台湾地震が南海トラフ巨大地震の前兆ではない」と言えるのかを理解できます。
- 「地震雲」や「予言」といった情報の信憑性を、冷静に判断できるようになります。
- 長期的な視点でのプレート活動の連動性について、深い知識が得られます。
- 漠然とした不安が解消され、本当に必要な防災対策に集中できるようになります。
不安を安心に変えるための知識が、ここにあります。
台湾地震と南海トラフ巨大地震の関連性、科学が示す真実は?

「衝突」する台湾と「沈み込む」南海トラフ
2024年4月に発生した台湾地震を受け、「南海トラフ巨大地震も近いのでは?」と不安に感じた方もいるかもしれません。
しかし、台湾で起こる地震と南海トラフで想定される地震は、関わっているプレートが同じ「フィリピン海プレート」であるにも関わらず、その発生の仕組み(メカニズム)が根本的に異なります。この違いを理解することが、二つの地震の関係性を正しく知るための第一歩となります。
台湾:プレート同士が「正面衝突」する場所
台湾という島は、海のプレートである「フィリピン海プレート」が、大陸のプレートである「ユーラシアプレート」に正面から衝突し、乗り上げるようにしてできた場所です。
この絶え間ない衝突の力で大地が隆起し、台湾の険しい山脈が形成されています。
台湾で頻発する地震は、この衝突によって蓄積された歪みが一気に解放されることで発生します。2024年4月の地震も、この「逆断層型」と呼ばれるメカニズムによるものでした。地面が突き上げられるような強い揺れが特徴で、建物の倒壊や山間部での土砂災害を引き起こしやすい傾向があります。
南海トラフ:プレートが「沈み込む」場所
一方、南海トラフ巨大地震は、プレートが「沈み込む」ことで発生します。南海トラフは、静岡県の駿河湾から九州の東方沖まで続く、深い海の溝です。
ここでは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に、年間数センチという速さで沈み込んでいます。この沈み込みが、巨大なエネルギーを生み出す原因となります。
巨大地震が発生する過程は、以下のようになります。
- 固着する沈み込むプレートと陸側のプレートの境界面が、まるでブレーキがかかったように固くくっつきます。
- 歪みがたまるプレートの沈み込みは止まらないため、陸側のプレートが引きずり込まれるようにして、内側に歪みがどんどん蓄積されていきます。
- 跳ね上がるやがて陸側のプレートが引きずり込みに耐えられなくなり、限界に達した瞬間に元に戻ろうと激しく跳ね上がります。
この「跳ね上がり」が、南海トラフ巨大地震の正体です。この現象は「海溝型巨大地震」と呼ばれ、非常に広範囲にわたる強い揺れと、壊滅的な巨大津波を引き起こすと考えられています。
一目でわかるメカニズムの違い
二つの地震の仕組みの違いを、以下の表にまとめました。
特徴 | 台湾地震 | 南海トラフ巨大地震 |
プレートの動き | 衝突・隆起 | 沈み込み |
断層のタイプ | 逆断層型 | 海溝型(メガトラスト) |
主な災害 | 激しい揺れ、土砂災害 | 広範囲の揺れ、巨大津波 |
このように、台湾地震と南海トラフ地震は、発生のメカニズムが全くの別物です。台湾が「プレートの衝突現場」であるのに対し、南海トラフは「プレートの沈み込みによってエネルギーが蓄積される現場」と理解すると分かりやすいでしょう。
「前兆ではない」と言える科学的根拠は?
結論からお伝えすると、台湾地震が南海トラフ巨大地震の「直接的な前兆」である可能性は、科学的に見て極めて低いと考えられています。
多くの地震学者がそう考える背景には、いくつかの明確な科学的根拠があります。
理由1:地震発生の「仕組み」が全く異なる
前の項目で解説した通り、台湾の地震はプレート同士の「衝突」によって発生する「逆断層型」です。一方、南海トラフ地震はプレートが「沈み込む」ことで起きる「海溝型」であり、発生の仕組みが根本的に違います。
このようにメカニズムが全く異なるため、片方の地震がもう片方の地震を、ドミノ倒しのように直接引き起こすとは考えにくいのです。
理由2:震源域が地理的に離れている
台湾と南海トラフの震源域は、同じフィリピン海プレート上にはありますが、地理的には数百キロメートル以上も離れています。
地震のエネルギーは、震源から離れるほど弱まっていきます。台湾で発生した地震の力が、遠く離れた南海トラフの固着域(プレートが強くくっついている部分)を破壊し、巨大地震を誘発するほどの直接的な影響を与える可能性は、非常に低いと言えます。
科学者が注目する「応力」の微妙な変化
ただし、科学者たちは「全くの無関係」だとも考えていません。注目されているのは、「応力(おうりょく)」という、岩盤にかかる力のバランスの変化です。
巨大な地震が起きると、その周辺の地殻は大きく変動し、プレート全体にかかる力のバランスが微妙に変化することがあります。台湾地震によって解放されたエネルギーが、フィリピン海プレートを通じて、南海トラフにかかる力を変化させる可能性は理論上否定できません。
しかし、この力の変化が、次の巨大地震を「促進する」のか、逆に「抑制する」方向に働くのか、あるいは「影響を及ぼすほどではない」のかを正確に評価することは、現在の科学技術では極めて困難です。
過去に、南海トラフの近くにある日向灘などで地震が発生した際も、気象庁は「南海トラフ沿いの固着状態に特段の変化を示すものではない」と評価しています。このことからも、個別の地震がすぐに巨大地震に結びつくわけではないことが分かります。
これらの理由から、台湾地震を南海トラフ巨大地震の直接的な前兆と結びつけて、過度に心配する必要はないと言えるでしょう。
フィリピン海プレートが繋ぐ間接的な影響
台湾地震と南海トラフ地震が、直接的な因果関係で結ばれていないことは、これまでに説明した通りです。
しかし、二つの地震が「全くの無関係」というわけでもありません。両者は、フィリピン海プレートという一枚の巨大な岩盤を介して、間接的に影響を及ぼし合っていると考えられています。
一枚のプレートで繋がる琉球海溝と南海トラフ
台湾の東方から九州の南、そして四国沖へと続く海底には、一つの連続したプレートの境界が伸びています。この境界は、九州の南方を境目として、二つの名前で呼ばれています。
- 琉球海溝(りゅうきゅうかいこう)台湾から九州の南西側にかけての境界です。南海トラフに比べてプレート同士の固着が弱く、エネルギーを小出しに解放したり、「ゆっくりすべり」という静かな地殻変動を起こしたりする傾向があると考えられています。
- 南海トラフ(なんかいとらふ)九州の北東側から静岡県沖にかけての境界です。こちらはプレート同士が非常に強く固着しており、巨大なエネルギーを溜め込みやすい、巨大地震の巣と言える場所です。
台湾は、この琉球海溝が大陸とぶつかる、非常に複雑な場所に位置しています。つまり、台湾と南海トラフは、性質の異なるエリアではありますが、一枚のフィリピン海プレート上で繋がっている隣人のような関係なのです。
影響は「力のバランスの変化」として伝わる
では、具体的にどのような影響が考えられるのでしょうか。
それは、ドミノ倒しのような直接的な破壊ではなく、「応力」という岩盤にかかる力のバランスが、プレート全体で変化することによる間接的な影響です。
巨大な地震が一度発生すると、そのプレートにかかっていた力のバランスは大きく変わります。台湾での地震によって変化した力のバランスが、一枚岩であるフィリピン海プレート全体に伝わり、遠く離れた南海トラフの固着域に何らかの影響を与える可能性は、理論上考えられます。
大きな板の端を押すと、板全体がしなって反対側の端にも力が伝わるのをイメージすると分かりやすいかもしれません。
ただし、その影響が南海トラフ巨大地震の発生を早めるのか、遅らせるのか、あるいは無視できるほど小さいものなのかを判断することは、現在の科学では非常に難しい課題です。
このように、二つの地震は「前兆」と呼べるほど強い関係ではありません。しかし、同じプレート上で起きる、連動した地殻活動の一部として捉える視点も、科学的には重要だと考えられています。
「地震雲」「2025年7月の予言」は本当?デマに注意
大きな地震が起きると、私たちの不安な気持ちに付け込むように、科学的根拠のない情報や「予言」といった噂が広がることがあります。
特にSNSでは、多くの人が拡散することで、うっかり信じてしまいそうになるかもしれません。ここでは、代表的な噂を取り上げ、なぜ科学的に見て信憑性が低いのかを冷静に解説します。
科学的な結論:「確実な予知は不可能」
まず大前提として、気象庁をはじめとする世界の地震学の専門機関は、「いつ、どこで、どれくらいの規模の地震が起きるか」を事前に高い精度で特定する、短期的な地震予知は「現在の科学技術では不可能」という見解で一致しています。
天気予報であれば、気圧の配置や雲の動きを衛星で観測し、シミュレーションすることで未来の天気を予測できます。しかし、地震の発生源は地下深くにあるため、そこで何が起きているのかを直接観測する手段がありません。
このため、気象庁も「日時と場所を特定した地震を予知する情報はデマ」と明確に注意を呼びかけています。
ケース1:「地震雲」は地震の前兆?
「普段見かけない、奇妙な形の雲が出ている。地震の前触れではないか?」という話を聞いたことはないでしょうか。このような雲は、俗に「地震雲」と呼ばれます。
古くから報告はありますが、結論として、雲の形と地震の発生との間に科学的な因果関係は証明されていません。
世の中で「地震雲」と呼ばれている雲のほとんどは、気象学の知識で説明がつく、ありふれた雲であることが分かっています。
例えば、飛行機雲や、風によってできる波状の雲などが、その見た目の珍しさから地震と結びつけられやすいようです。
珍しい形の雲も、地震も、それぞれが一定の頻度で起こる自然現象です。たまたま前後して発生した二つの出来事を、不安な気持ちから後付けで関連付けて解釈している、というのが現在の科学的な見方です。
ケース2:「2025年7月の予言」の正体
これまで「2025年7月に大災難が起こる」という噂が、周期的にインターネット上で話題になっていました。
この話の発端は、ある漫画家の方が自身の夢を記録した作品にあります。作品の中で未来の出来事を示唆する記述があったことから、「大災害を予言している」と解釈され、話が広がっていきました。
この噂には、科学的な根拠は一切ありません。
地震がいつどこで起きるか分からないという不確実性は、私たちにとって大きなストレスです。そのような心の隙間に、具体的な日付を示す「予言」は、ある種の安心感を与えてしまうのかもしれません。
しかし、不確かな情報に振り回されることは、かえって社会の混乱を招き、本当に重要な防災への意識を逸らしてしまいます。
大切なのは、不確かな予言を探し求めることではありません。地震は「いつ来てもおかしくない」という科学的な事実に立ち、自分自身でコントロールできる「備え」に意識を向けることが、不安に対する最も有効な対処法なのです。
数千年単位で見るプレート活動と巨大地震の連動性
これまでの話とは少し視点を変えて、数十年から数千年という、もっと長い時間軸で地震の歴史を振り返ってみましょう。
すると、台湾から南海トラフに至る地域が、より大きな視点で見ると、一つのシステムとして連動している可能性が浮かび上がってきます。
数十年スケールで見える「西進」の傾向
ある研究では、過去の南海トラフ巨大地震が発生する前の数十年間を分析すると、興味深いパターンが見られると指摘されています。
それは、日本の東北地方から西南日本にかけて、マグニチュード7.5以上の大きな地震の活動域が、少しずつ西へ移動する「西進」という傾向です。
これは、瞬時に地震が誘発されるわけではなく、プレート全体にかかる力のバランスが、長い時間をかけてゆっくりと伝わっていく様子を示唆しています。
このことから、日本の広域な地震活動は、時間差はあれど、互いに影響を及ぼしあっていると考える専門家もいます。
2000年前に起きた「規格外の巨大地震」の痕跡
さらに時間を遡り、地質学的な調査を見てみると、衝撃的な事実が浮かび上がります。
地質学者の調査によると、今から約2000年前に、私たちの知る歴史地震とは比較にならないほどの「規格外の巨大地震」が発生した可能性が指摘されています。その根拠となるのは、各地に残る巨大な津波の痕跡です。
- 石垣島の巨大な津波石沖縄県の石垣島には、重さ1,000トンと推定される、サンゴ礁でできた巨大な岩が打ち上げられています。通常の台風や、100~150年周期で起きる南海トラフ地震の津波では、このような巨大な岩を動かすことはできないと考えられています。
- 各地に残る津波堆積物高知県など、南海トラフ沿岸の地層からも、この時期に広範囲かつ巨大な津波が押し寄せたことを示す堆積物が見つかっています。
これらの痕跡は、琉球海溝から南海トラフにかけての広大な領域が、一度に連動して動いたことで発生した、M9クラスを超えるような超巨大地震の結果ではないか、と推測されているのです。
この事実は、台湾地震が南海トラフ地震の短期的な「前兆」であるという見方を否定しつつも、私たちに厳粛な可能性を突きつけます。
それは、「琉球海溝から南海トラフに至るプレート境界全体が、数千年という単位で見れば、一つの巨大な地震システムとして連動しうる」という事実です。
私たちは、そのような地球の長大な活動サイクルの中で暮らしている、という視点を持つことも大切なのかもしれません。
台湾地震と南海トラフ地震を想定した台湾旅行の準備とは?

出発前に確認!台湾地震警報アプリと緊急連絡先
地震が多い台湾へ旅行する際には、事前の準備が安心に繋がります。
特に、現地で地震の揺れを感じた時に慌てないよう、日本にいる間にできることがあります。出発前にスマートフォンの設定や、緊急時の連絡先を確認しておくだけで、いざという時の行動が大きく変わります。
スマートフォンで受け取る「地震速報」
台湾では、日本と同じように、大きな揺れが来る数秒から数十秒前に知らせてくれる「地震速報(EEW)」のシステムが整備されています。旅行者でも、いくつかの方法で速報を受け取ることが可能です。
- 中央氣象署(台湾の気象庁)の公式アプリ台湾の気象庁にあたる「中央氣象署」は、公式の天気・地震情報アプリを配信しています。「中央氣象署E – 地震測報」や「中央氣象署W – 生活氣象」といったアプリをインストールしておくと、台湾での地震情報をいち早く知ることができます。出発前に日本でダウンロードしておくことをお勧めします。
- 民間の速報アプリ公式アプリの他にも、「KNY台灣天氣.地震速報」や「台灣地震速報」など、台湾で広く使われている民間のアプリがあります。日本語に対応しているものや、より詳細な設定が可能なものもありますので、使いやすいものを選んでみてください。
「もしも」の時に役立つ緊急連絡先リスト
旅行中に万一の事態に遭遇した場合に備え、以下の緊急連絡先をスマートフォンの電話帳に登録しておくと安心です。
連絡先 | 電話番号 | 備考 |
警察 | 110 | 事件・事故の際に利用します。 |
消防・救急 | 119 | 火事や急病、怪我の際に利用します。 |
日本台湾交流協会 | 02-2713-8000 | 日本の事実上の大使館です。パスポート紛失や、重大なトラブルの際に相談できます。 |
警察(110)と消防・救急(119)の番号は、日本と同じなので覚えやすいです。
言葉に不安がある場合は、まず日本台湾交流協会に連絡して指示を仰ぐか、ホテルのスタッフなど、日本語が通じる人に助けを求めましょう。
最新の安全情報を入手するために
外務省の海外安全情報配信サービス「たびレジ」に登録しておくことも、非常に有効な備えです。
旅行日程や滞在先を登録しておくと、現地で災害や緊急事態が発生した際に、最新の安全情報や注意喚起のメールが届きます。登録は無料ですので、出発前に必ず済ませておきましょう。
旅行カバンに加えるべき防災グッズ厳選リスト
日本から防災グッズを全て持っていくのは大変ですが、普段の持ち物やスーツケースに少し加えるだけで、いざという時の安心感が大きく変わります。
旅行という状況を考え、軽くてかさばらないことを基準に、持っておくと役立つアイテムを厳選しました。
常に持ち歩くデイパックに入れておきたい物
観光中など、ホテルから離れている時に被災することも想定し、日中持ち歩くバッグに最低限入れておきたいアイテムです。
- モバイルバッテリースマートフォンは、情報収集や安否確認、翻訳アプリの使用など、非常時の生命線になります。フル充電されたモバイルバッテリーは必需品です。
- 現金(台湾ドル)大規模な停電が発生すると、クレジットカードや電子マネーが使えなくなる可能性があります。少額紙幣や硬貨を混ぜて、ある程度の現金を持っておくと安心です。
- 携帯用の小型ライト停電時の移動や、暗い場所で物を探す際に役立ちます。スマートフォンのライトでも代用できますが、バッテリーを温存するために、キーホルダー型のLEDライトなど、小さなものがあると便利です。
- ホイッスル(笛)万が一、瓦礫の下などに閉じ込められた際、大声を出し続けると体力を消耗します。小さな笛は、少ない力で大きな音を出せるため、救助を求めるのに非常に有効です。
- 携帯食料と飲料水ペットボトルの水や、チョコレート、エナジーバーなど、手軽にカロリーを補給できるお菓子を少し持っておくと、帰宅困難になった場合などに役立ちます。
スーツケースに入れておきたい物
ホテルでの滞在時や、避難時に持ち出すことを想定したアイテムです。
- 常備薬と簡単な救急セット普段服用している薬は、災害時には手に入りにくくなります。必ず多めに持っていきましょう。また、絆創膏、消毒液、鎮痛剤など、使い慣れた基本的な救急用品があると安心です。
- 衛生用品ウェットティッシュや携帯用トイレは、断水時に役立ちます。特にウェットティッシュは、体を拭いたり、身の回りを清潔に保ったりと、様々な用途に使えます。
- パスポートのコピーと証明写真パスポートを紛失した際の再発行手続きがスムーズになります。スマートフォンで撮影したデータと、紙のコピーの両方を用意しておくと万全です。
- 履き慣れた歩きやすい靴観光のために当然用意していると思いますが、災害時の避難は、ガラスの破片などが散乱した道を長時間歩く可能性があります。サンダルなどではなく、底が厚いスニーカーが最適です。
これらのグッズは、旅行の負担にならない範囲で準備することが大切です。自分にとって何が必要かを考え、オリジナルの防災ポーチを作ってみるのも良いでしょう。
旅行中に地震?ホテル・屋外・交通機関別行動マニュアル
旅行中に突然、大きな地震に遭遇したら、誰でもパニックになってしまうかもしれません。
しかし、そんな時こそ、まず落ち着いて身の安全を確保することが最も重要です。揺れを感じたら「まず低く、頭を守り、動かない」という基本行動を思い出してください。
ここでは、旅行者が遭遇しやすい場所別に、具体的な行動マニュアルを解説します。
ホテル・建物の中にいる場合
室内にいる時の基本は、「慌てて外に飛び出さない」ことです。落下物やガラスの破片で怪我をする危険があります。
- 丈夫な机の下に隠れるまず、頑丈な机やテーブルの下に身を隠し、脚にしっかりとつかまります。揺れで家具が動いても、一緒に動けるようにするためです。
- クッションなどで頭を守る隠れる場所が近くにない場合は、部屋の中央など、物が落ちてこない・倒れてこない安全な場所に移動し、その場で姿勢を低くします。そして、枕やクッション、カバンなどで頭をしっかり守りましょう。
- 窓や家具から離れる窓ガラスが割れて飛散したり、大きな家具が倒れてきたりする危険があるため、窓際や固定されていない家具のそばからはすぐに離れてください。
揺れが収まった後は、ドアを開けて避難経路を確保し、エレベーターは絶対に使わずに、階段で避難します。ホテルのスタッフの指示に従って、落ち着いて行動しましょう。
屋外にいる場合
屋外では、頭上からの落下物が最も危険です。
- 落下物から身を守るまず、持っているカバンなどで頭を守ります。周囲を見渡し、ビルの壁、看板、割れた窓ガラス、自動販売機など、落ちてきたり倒れてきたりしそうな物から、できるだけ離れてください。
- 安全な場所に移動する落下物の危険がない、公園や広場などの開けた場所に移動するのが最も安全です。ブロック塀や電柱、電線などもないか、よく確認しましょう。
もし海岸近くにいる場合は、津波の危険があります。揺れが収まったら、すぐに高台や津波避難ビルに避難してください。山間部では、崖崩れや落石の恐れがあるため、急な斜面から離れるようにしましょう。
電車・バス・MRT(地下鉄)に乗っている場合
乗り物の中にいる時は、急停車に備えて、自分の体を固定することが最優先です。
- 手すりやつり革にしっかりつかまる電車やバスは、地震を感知すると緊急停止することがあります。転倒して怪我をしないよう、近くの手すりやつり革に両手でしっかりとつかまりましょう。
- 低い姿勢で頭を守る座席に座っている場合は、前かがみになって、カバンなどで頭を保護します。
- 勝手に車外に出ない自己判断で車外に飛び出すのは非常に危険です。電車がトンネルの中や橋の上で停車することもあります。必ず乗務員の指示があるまで、車内で待機してください。
どの場所にいても、パニックにならず、まずは「自分の身を守る」行動をとり、揺れが収まったら「周囲の状況を確認して安全に避難する」ことが鉄則です。
安全な避難場所の見つけ方と情報収集術
揺れが収まった後、次に取るべき行動は「安全な場所への避難」と「正確な情報の収集」です。
特に災害時は、不確かな情報やデマが広がりやすくなります。パニックにならず、信頼できる情報源を元に行動することが、自分自身の安全を守ることに繋がります。
安全な避難場所をどう見つけるか
まずは、二次災害の危険がない場所に身を寄せることが最優先です。
- 原則は「開けた広い場所」へ倒壊の危険がある建物や、物が落ちてくる可能性がある電柱、ブロック塀などから離れた、広い場所を目指しましょう。具体的には、大きな公園や学校のグラウンドなどが避難場所として適しています。
- 避難場所を示す標識を探す台湾にも、日本と同じように、災害時に開設される公式の避難場所(避難收容處所)が指定されています。多くは学校や公的な施設です。緑色の背景に人が走っているマークが入った、避難場所を示す案内標識が設置されていることがあるため、周囲を探してみましょう。
- 周りの人の動きを参考にするどこへ避難すれば良いか分からない場合は、周りの現地の人たちがどちらの方向へ落ち着いて移動しているかを見て、それに倣って行動するのも一つの方法です。ただし、パニックになって走っている集団にはつられないよう、冷静に判断してください。
- 海岸近くにいる場合は、すぐに高台へ海岸付近で大きな揺れを感じた場合は、津波の可能性があります。ためらわずに、すぐに内陸の高台や、指定された津波避難ビルなど、より高い場所へと避難を開始してください。
正確な情報をどうやって集めるか
インターネットが使える状況であれば、SNSなどを見る前に、まず公的な機関からの情報を確認しましょう。
- 公式ウェブサイトやアプリを確認する信頼できる情報源は以下の通りです。ブックマークに登録しておくと、いざという時にスムーズにアクセスできます。
- 日本台湾交流協会:日本の大使館に相当する機関で、日本人向けの安全情報を発信します。
- 外務省海外安全ホームページ:日本の外務省が発信する、海外の安全に関する公式情報です。
- 台湾中央氣象署:台湾の気象庁にあたる機関で、地震や気象に関する最新情報を確認できます。
- ラジオの情報を聞く停電や通信障害が発生した場合でも、ラジオは貴重な情報源となります。特に、台湾の公共放送や、災害情報を専門に扱う「警察廣播電臺(警察放送)」などが、現地の詳細な状況を伝えてくれます。
- 公衆Wi-Fiの活用台湾では、災害時に無料の公衆Wi-Fiが開放されることがあります。駅や公共施設などで利用できる「iTaiwan」などのサービスが、情報収集の助けになる場合があります。
もし言葉に不安がある場合は、ホテルの従業員や警察官など、公的な立場の人に助けを求め、正確な情報を得ることが大切です。
日本の家族と連絡をとる方法は?
大きな災害が発生した後、何よりも先に日本の家族へ「無事である」ことを伝えたい、と思うのは当然のことです。
しかし、被災地からの電話は、安否確認の通話が殺到して、固定電話・携帯電話ともに非常につながりにくくなります。
いざという時に確実に連絡をとるため、災害時の連絡方法と、事前に家族と決めておくべきルールを確認しておきましょう。
インターネット経由での連絡を最優先に
災害時は、音声通話の回線よりも、インターネットのデータ通信のほうが比較的つながりやすいと言われています。テキストメッセージやSNSの活用を第一に考えましょう。
- LINEやメッセンジャーなどのチャットアプリ「無事です」という短いテキストメッセージを送るだけでも、家族は安心できます。スタンプ一つでも構いません。通話機能はデータ通信量が大きく、回線を圧迫するため、まずはテキストでの連絡を試みてください。
- Facebook、X(旧Twitter)などのSNSFacebookの「災害時情報センター(セーフティチェック)」機能が有効になった場合は、自分の安否状況を登録することで、友人・知人に一斉に無事を知らせることができます。また、X(旧Twitter)などで「#台湾地震 #無事です」といったハッシュタグをつけて投稿することも有効な手段です。
日本の災害用伝言サービスを活用する
日本の通信会社が提供する災害用の安否確認サービスも、海外から利用できるものがあります。
- 災害用伝言板(web171)NTTが提供するインターネット上の伝言板サービスです。海外からでも、パソコンやスマートフォンを使ってアクセスし、安否情報を登録・確認できます。
- 「web171」のサイトにアクセスします。
- キーとなる電話番号(日本の自宅や家族の携帯電話番号など)を入力します。
- 「無事です。台湾の〇〇にいます」といった100文字以内のメッセージを残せます。
このサービスの利点は、被災地の電話が不通でも、日本の家族がインターネットを通じてメッセージを確認できる点にあります。
- 災害用伝言ダイヤル(171)について電話で安否情報を録音・再生できる「災害用伝言ダイヤル(171)」は、日本国内での利用を前提としたサービスのため、海外から直接かけることはできません。海外からは、インターネット版の「web171」を利用しましょう。
事前に家族と決めておくべき「ルール」
いざという時にスムーズに安否確認ができるよう、旅行前に家族会議を開き、連絡のルールを決めておくことが非常に重要です。
- 連絡手段の優先順位を決めておく「まずLINEで連絡する。つながらなければweb171を見る」というように、どのサービスをどの順番で確認するか、優先順位を決めておきましょう。
- キーとなる電話番号を統一しておく「web171」を使う場合、どの電話番号を連絡の合鍵にするかを事前に共有しておきます。例えば、「お父さんの携帯番号」や「日本の実家の固定電話番号」など、家族全員が分かる番号を一つ決めておくことが大切です。
- 遠方の親戚を中継点にする被災する可能性が低い、遠隔地に住んでいる親戚や知人を「連絡の中継点」に指定しておくのも有効な方法です。全員がその人に連絡を入れるようにすれば、情報が集約しやすくなります。
まずは自分の安全確保が最優先ですが、その後の安否連絡は、事前の準備があるかないかで大きく変わります。ぜひ、出発前にご家族と話し合ってみてください。
まとめ:台湾地震と南海トラフ地震の関係性

記事のポイント
- 台湾と南海トラフでは地震の発生メカニズムが根本的に違う
- 台湾はプレートの「衝突」、南海トラフは「沈み込み」で発生する地震である
- 震源が地理的に遠く離れており、直接的な誘発の可能性は低い
- 台湾地震を南海トラフ巨大地震の直接的な「前兆」と見なす科学的根拠はない
- 両者は一枚のフィリピン海プレートを介して間接的に繋がっている
- 地震による応力変化がプレート全体に影響を及ぼす可能性は否定できない
- その影響が地震を促進するか抑制するかは現代科学では不明である
- 「地震雲」や「予言」といった地震の噂に科学的な根拠はない
- 日時と場所を特定する短期的な地震予知は不可能とされている
- 数千年単位では琉球海溝から南海トラフが連動した可能性も指摘される
総括
この記事では、台湾地震と南海トラフ巨大地震の関連性について、科学的な視点から詳しく解説しました。
大きな地震のニュースに触れると、「次は日本なのでは?」と不安に感じてしまうのは自然なことです。しかし、これまで見てきたように、台湾で起こる地震と南海トラフで想定される地震とでは、その発生メカニズムが根本的に異なります。そのため、台湾の地震が南海トラフの巨大地震を直接誘発する「前兆」である可能性は極めて低いというのが、現在の科学的な見解です。
ただし、両者は「フィリピン海プレート」という一枚の岩盤で繋がっているため、全くの無関係というわけでもありません。重要なのは、一つの地震に過度に恐怖心を抱いたり、科学的根拠のない情報に惑わされたりするのではなく、この機会に改めて地震への備えを再確認することです。
南海トラフ巨大地震は、今回の台湾地震とは関係なく、いつか必ず起こるものです。だからこそ、日頃からハザードマップを確認したり、家族と避難場所や連絡方法を話し合っておいたりすることが、ご自身と大切な人の命を守る最も確実な方法となります。
この記事が、台湾地震と南海トラフに関する皆様の疑問を解消し、防災意識を高める一助となれば幸いです。